これから先、地方が自立できるかどうか、その命運が懸かっているともいえる、国の三位一体の改革が山場を迎えています。
この原稿を書いている時点では、まだ出口は見えていませんが、地方にとって、地方自らの自己決定権を持つことができるのか、少子高齢社会をしっかり支えていくための財政基盤が確立できるかどうかの瀬戸際に立っています。
地方に生きるわたしたちは、険しい山あいの田畑を必死に守り、棚田を造り治山治水を行い、国土を保全しながら、生活を切り詰めて、子どもたちを都会の貴重な労働力として提供してきました。故郷を離れた子どもたちが、まさに日本の高度成長を支え、現在の経済大国「日本」の礎を築き上げていったのです。
少し前までは、都会から、それぞれの故郷や地方に対する温かい思いが届いていたような気がします。大都会に暮らす多くの人々にも愛すべき故郷があり、そのことを誇りとして、故郷に残してきた年老いた両親や親類の元気な顔を思い出しながら、地方を大切にしていたように思います。
しかし、最近の三位一体改革の論議を見ると、地方に対する思いやりが感じられず、大都会だけの論理を振りかざす人々が多くなってきており、わたしたちは危機感を抱いています。地方には無駄が多過ぎると言ってはばからない人たちには、守るべき故郷はないのでしょうか。
どこに住んでいようと、自分たちを育て支えてくれた故郷と、そこに生活している人々の幸せを思いやる心を大切にしたいと強く感じています。
|