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2016年から本山町職員になり、畜産や農業を担当。特に、棚田の現場に足を運ぶうちに、風景の見え方が変わっていった。地域の人、生産者の温かい声に支えられる。「最初に見たときは単純に風景がすごい、きれいとしか思っていませんでした。今は、ここで米を栽培することも、風景を維持していくことも大変だと実感しています。少しでも、守るためのお手伝いをしたい」。農家と農地を守る手立てを日々講じる山本さん。そして、その奮闘する背中を、生産者や地域の人たちの温かい声かけが支えている。人との距離が〝近く〟、温かい。そんな環境に身を置くことで、山本さん自身も、変わっていったという。「人との付き合いがいかに大事かを知ったし、苦手意識がなくなりましたね。むしろ、コミュニケーションが楽しいです」今、子ども2人も合わせて4人家族。自宅近くの沢や森が遊びのフィールドだ。自然と人の温かさに包まれて、仕事も暮らしも健やかな時間をつむいでいく。1.棚田ブランド米「土佐天空の郷」でこしらえたおにぎり。「お米はもちろん、野菜もおいしくて、東京から両親が遊びに来たらいつも、ここの食べ物に感動していますね」2.「土佐天空の郷」をアピールするためにできた「おむすび処こめのみみ」。山本さんもよく利用するという。3.役場の裏を、清流の吉野川が流れる。「清流釣りはまだやったことがないですが、仕事の先輩と海釣りはしました」と山本さん。4.アウトドア施設「モンベルアウトドアヴィレッジ本山」もある。自然と野生動物が好き。導かれた、〝自然の楽園〟。東京都府中市で生まれ育った山本修悟さんは、子どもの頃から自然や動物が好きで、大学時代、野生動物の研究を専攻。その流れで、野生動物を研究する高知県須崎市のNPO法人に就職した。「父親の実家が愛媛だったので、もともと四国に親しみがありました。両親に連れられて帰省するたびに、山や川に出かけた体験が楽しかったのを覚えています」海の印象が強い高知県だが、実は森林面積の比率が日本一高い山の地域でもある。「海もあって、川もあって、山もある。『自然がいっぱい』とはいっても、そのスケールのすごさに驚きましたね」高知に移住して以降、各地で野生動物の調査をしながら、場所が変われば風景も人の気質もまるで違う〝おもしろさ〟を味わう。現在のパートナーにも出会い、結婚。高知で暮らしていくために行政職員の道を志す。そして選んだのが、本山町。エメラルドグリーンをたたえた汗見川をはじめ、未知の自然の美しさに魅了されたからだ。213429