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ん。森林を維持していくためにはもう一度、山と地域の人たちをつなぐ必要があると思っています」滝川さんは今、山歩きのイベントを企画するなど、山と人とを〝編集〟することにも熱を入れる。今はここで生きよう。決意の先に見えてくるもの。佐川暮らしも6年になる。ずっとここで生きるのか、迷った時期も正直ありました。どこにも理想郷はなくて、結局、自分がどう生きたいかが大事なのだと気づきました」フリーランスの林業家として生きるために佐川町を選び、腹を括った滝川さんの仕事は、どんどん広がっている。自活するために複業も始めた。写真好きを活かして写真整理アドバイザーの資格を取得。滝川さんが暮らす地区の写真を一冊にする仕事をしている。「その中に偶然、山主さんがいたりして、山とは関係ないところで山とつながるのがおもしろいです。軸は林業に置きながら、自分と林業の世界を広げていきたいですね」。「滝川景伍」という一つの〝道〟を、このまちで、自らの手でゆっくりと築いていく。1.自ら作った道を歩く滝川さん。町が森林の所有者から20年間預かる形で、森林を確保。その森林を林業家に割り当てる。「協力隊を卒業後、すぐに自分が作業できる山があったのでありがたかったです」2.木材を地域で活用するための場として、佐川町がつくった「さかわ発明ラボ」。最新のレーザー加工機をそろえたり、子どもを対象にした「発明クラブ」を開いたりと、魅力的なモノ・コトを展開。3.ラボのスタッフと一緒に木材の利用について話す滝川さん。「自分で伐った木で何かをつくることもやってみたいですね」雑誌の編集者から、まちと山をつなげる〝編集者〟へ。森林率が国内トップの高知県。自伐型林業が盛んな県にあって先行するのが、佐川町だ。滝川景伍さんは、その担い手となる地域おこし協力隊の第一号になる。京都で15年、長野で3年を過ごし、大学で東京へ。出版社に就職し、カメラの雑誌などの編集者になり、「昼夜なく」働いた。勤続8年、子どもの誕生で身の振り方を考える。「自伐型林業」に出会ったのはそんなときだった。「素人でもできて、環境にやさしく、生活もできると大学の先輩から聞いて。何より、おもしろそうだと」。編集者の直感が働く。ウェブ上で調べて見つけたのが、佐川町の協力隊募集の記事だった。2014年、家族とともに佐川町へ。仕事と家庭とバランスよく働ける環境の中で、滝川さんの林業の仕事は、作業するための道作りから始まった。「林業はやればやるほど、奥深いです。今ぼくがやっていることは、子どもや孫の世代でようやく実る仕事ですから。ただ、仕事を山だけに完結するつもりはありませ23133