こうち二段階移住

Craft beerCraft beer

クラフトビールとは、小規模醸造所がつくる個性的なビールのこと。大阪から高知へ移住、開業からわずか2年で数々の賞を受賞し、注目されるブルワー(ビール醸造家)の瀬戸口信弥さんにお話を伺いました。

香美市土佐山田町
瀬戸口信弥 / 高知カンパーニュブルワリー

ビールが苦手な妻と、
クラフトビールで乾杯をしたいと思った。

Craft beer クラフトビールの職人

まずは、ビールづくりとの出会いについて教えてください。

瀬戸口:もともと僕が大のビール好きだったんです。だけど妻はビールが苦手。「妻と一緒に、美味しいビールが飲めたらなあ」。そんなささやかな気持ちから、自分でつくってみようと思い立ちました。そのときは大阪の電機メーカーに勤めていましたが、そのうち本格的にビールづくりを学びたくなり、大阪から島根の「石見麦酒」へ研修に通い出したのがきっかけです。

なぜ高知県香美市へ移住することに?

瀬戸口:義理の兄が高知に住んでいたこともあり、高知へは何度か訪れていて。原風景が残る大自然に魅了され、漠然とですが移住を考えるようになっていました。そんな折、移住相談会で出会ったのが、香美市への移住サポートを行う「NPO法人いなかみ」の近藤さん。穏やかな口調やふるまいから、素敵なお人柄だと感じました。クラフトビールのことを話すと、「香美市の地元の人たちにもお話ししてみては?」とお誘いいただいたのが香美市との出会いでした。

Craft beer クラフトビールの職人

地方で起業するのは大変だったのでは?

瀬戸口:近藤さんに香美市の地元の方々を集めていただき、「クラフトビール起業」の資料を作ってプレゼンしたところ、多くの方が興味を持ってくれたんです。それからは休日を利用して香美市に足を運ぶようになり、いろいろな方と知り合うことができて。そのひとりが、地元のスーパー「バリュー」の石川社長です。スーパーの精米場に隣接する工場スペースをお借りして、開業にこぎつけることができました。以来、石川社長には販売や製造などの面でもご協力いただき、ずっとお世話になっています。

移住と起業について、奥様からの反対はありませんでしたか?

瀬戸口:ある日、思い切って「香美市への移住とクラフトビール起業を考えているんやけど…」と妻に打ち明けたところ、「私も高知が好きやし、人生は1回きりやしね。好きなことやろうよ。一緒に行こう!」と背中を押してくれました。

Craft beer クラフトビールの職人

事務所の壁に貼られているのは?

瀬戸口:起業を決めたとき、「実現したいイメージで未来予想図を描いてみよう」と、妻とふたりでつくったものです。社名の「カンパーニュ」という言葉には、「いい日も悪い日も、家族で食卓を囲んで乾杯を」の意味が込められています。この未来予想図は僕らの原点。いつでも初心に返ることができるように、事務所に貼っています。

Craft beer クラフトビールの職人
Craft beer クラフトビールの職人

ロゴや瓶のデザインも素敵ですね。

瀬戸口:ありがとうございます。このロゴは、近藤さんにご紹介いただいたデザイナーの坂東真奈さんにつくってもらいました。「高知の海に、ふたりでビールの種をまく」ことをコンセプトにしたもので、とても気に入っています。
また、瓶は一般的な細長い形にするか、小さな形にするかでとても悩みましたが、素朴さやかわいらしさを大事にしたかったのと、これまでの高知になかった新しさを表現したくて、このデザインに決めました。

Craft beer クラフトビールの職人

クラフトビール職人としてのこだわりを教えてください。

瀬戸口:高知には、あまり知られていない素晴らしい素材がたくさんあります。そんな素材を副原料にできるのが、クラフトビールの魅力のひとつだと思っています。例えば、碁盤などに使われる榧(かや)という木があります。榧は成長が遅く、木材としては使いにくいためほとんど扱う人がいないのですが、榧の実って柑橘系の爽やかな香りがするんですよ。これをハーブとしてビールの素材に使えないだろうか?と試行錯誤して生まれたのが、新作の「かやの森ヘイジーエール」です。
こういった高知ならではの素晴らしい素材を探して、高知だからこそできるビールを世の中に届けること。それが、僕の職人としてのこだわりです。

最後に。
高知市を含む「れんけいこうち広域都市圏」では、二段階移住を推進するプロモーションとして、2019年に「#田舎暮らしは甘くない」を展開しました。瀬戸口さんにとって、田舎暮らしはどんなものでしょうか?

瀬戸口:妻とふたりで考えた高知移住のイメージを形にするまでに、いくつものハードルがありました。「田舎暮らしは甘くない」のは事実だと思いますが、僕の場合、幸運にも近藤さんや石川社長、地域の方々との出会いに恵まれ、支えていただけました。移住への思いと同じくらい人との関わりを大事にすることで、幸せな田舎暮らしへの道が拓けるのかなと思います。

Craft beer クラフトビールの職人
瀬戸口信弥

瀬戸口信弥

大阪府出身。電機メーカー在職中、株式会社石見麦酒にて研修を受け、クラフトビールの醸造を学ぶ。2017年7月、「合同会社高知カンパーニュブルワリー」を設立し、高知県香美市に移住。2018年3月より、クラフトビール「TOSACO」の製造販売を開始。
https://tosaco-brewing.com/

愛のある移住のかたち、こうち二段階移住