こうちミュージアムネットワーク

5. ミカドアゲハ -高知市広報「あかるいまち」2012年6月号より-

 ミカドアゲハは、鱗翅目(りんしもく)アゲハチョウ科のアオスジアゲハに似た大型の大変美しいチョウである。羽の地色は黒で表面に青みがかった白色から青色の帯と斑があり、裏面の斑紋の一部が赤色のものと黄色のものとがいる。

 もともと熱帯性のチョウで、日本における分布は本州(知多(ちた)半島、紀伊半島、山口県など)、四国南部、九州、対馬(つしま)、南西諸島とされている。県内では海岸線沿いに生息地が広く点在している。

 個体数が必ずしも多くないため、多産地の高知市において昭和十八(一九四三)年に国の天然記念物に指定されている。昭和二十七年三月二十九日に国の特別天然記念物として「高知市のミカドアゲハ及びその生息地」が指定された。そして、その指定地である潮江天満宮境内・要法寺境内・潮江中学校校庭には、教育委員会により看板が立てられ、保護啓発が行われている。

 幼虫の食樹は、モクレン科のオガタマノキやタイサンボクである。指定地にはオガタマノキがあり、現在は見上げるほどの巨木となっているものもある。

 チョウの発生時期は、四月下旬〜五月と七月上旬〜八月の二回あり、卵はオガタマノキなどの新芽の葉裏に1個ずつ産み付けられる。ふ化したばかりの幼虫は黒色で、一部が白く鳥のふんのように見える。葉を食べ脱皮を繰り返し成長した終齢幼虫は、全身が濃い緑色となり黄色の輪に囲まれた黒い目玉模様を持つようになる。そして、蛹(さなぎ)となり夏に羽化するものと、冬を越し翌年に羽化するものとがいる。

 市では保護活動に協力するため、筆山やわんぱーくこうちにオガタマノキやタイサンボクを植樹し、現在では毎年繁殖が確認されるようになっている。世界各地で多種多様な生物が減少や絶滅している状況の中、指定から六十年が経過した現在においてもその姿を県都高知市で見ることができることは、素晴らしいことではないだろうか。

 この美しいチョウが指定地のオガタマノキの巨木の周囲を飛び交う姿や、河畔に咲くセンダンの花の蜜を吸うために上空からふわりと舞い降りてくる姿を、いつまでも見ることができるようにしたいものである。

[こうちミュージアムネットワークわんぱーくこうちアニマルランド 園長 渡部 孝]

屋根のふき替えを終えた竹林寺の本堂(五台山)

●校庭に立つオガタマノキ(後方の高木)と
啓発看板(潮江中学校)

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