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このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。
歴史万華鏡
執筆「こうちミュージアムネットワーク」の皆さん
第52回 大正期の図書館の記録から
高知市広報「あかるいまち」2016年9月号より
大正期の高知県立図書館
●大正期の高知県立図書館
 二〇一六年は高知県立図書館にとって節目の年にあたる。
 今から百年前の一九一六(大正五)年三月二十五日、今の高知県庁の西隣に「高知県立図書館」が誕生した。その様子は当時の高知新聞が詳しく伝えているが、これをきっかけに高知でも近代的な図書館サービスが始まったのである。
 閲覧の無料化や館外への貸し出しなどをはじめ、「(図書館は)徒(いたずら)に図書を買い入れて見に来る人を待ち受けて之を見せるという様な単純なものではない」(館報第二号)との意気込みから、県下を対象とした「巡回文庫」や、読書意欲を刺激する講演会・展覧会なども積極的に行った。こうした取り組みが利用を拡大し、一九二六(大正十五)年には閲覧者数が開館当初の倍になるなどの伸長ぶりを見せた。大正期は、まさに図書館サービスが大きく盛り上がった時期だった。
 ところで、このころ発行された図書館報に、将来の図書館を予測した小さな記事が掲載されている。そこには「洋館五層楼、二三四階が図書閲覧室、五階が娯楽室」(館報第六号)という図書館像が描かれているが、新たに建つオーテピア図書館に近いものがあるから驚く。もちろん、規模が大きいだけでは十分とは言えない。図書館は、より良い施設をめざして成長していく必要があるが、それを促すのは図書館員だけでなく、利用する地域の人々や社会でもある。この点は昔から変わらなかったに違いない。かつての図書館員らが図書館サービスの普及に奔走したのは、そうした確信があったからではないだろうか。
 図書館を取り巻く環境は大きく変わったが、特に情報量の増加は目を見張るものがある。図書館サービスの根幹は「人と情報をつなぐ」というところにあるが、これは今後さらに重要性を増していくだろう。それだけに図書館サービスの普及は依然として重要であるし、これからの図書館に務める者として、かつての図書館員らの意気込みを忘れないようにしたい。

こうちミュージアムネットワーク 高知県立図書館 中嶋 浩平
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