土佐史研究家 広谷喜十郎 |
222鏡川を考える(2)-高知市広報「あかるいまち」2002年8月号より- | |
桂井和雄氏は、『土佐の伝説(二)』の中で、土佐山村の山姥(やまんば)信仰を紹介している。 この村には山姥の滝や山姥の谷と呼ばれている地名があり、特別な方言の一つに「山姥が付く」がある。これは「家運の栄える」という意味があると言われ、山姥を祭る小さな神社もあるという。さらに、「昔、土佐郡土佐山村高川の申山(さるやま)に、三目八面(みつめはちめん)という目が三つ顔の八つある怪物がすんでいて、隣村森(森村、現土佐町土居)への通行人を捕まえて食うていた」との怪物話も紹介している。この怪物を水野若狭守(みずのわかさのかみ)の弟・注連太夫(しめだゆう)という人が、山に火を放って焼き殺してしまったという。怪物の死がいは、隣村へまたがるほどとてつもなく大きかった、という。日本神話に出てくる有名なスサノオノミコトの「八岐大蛇(やまたのおろち)退治」の話を思い出した。 これらの伝承から、自然に親しむとともに自然の厳しさも厳粛に受け止めていたことが分かる。 高知市の朝倉神社の境内社の一つに、雨の神を祭る荒倉神社が鎮座している。昔は鏡川という荒ぶる川や山の霊を鎮めるために、赤鬼山や荒倉神社が信仰の対象となっていたのではなかろうか。 『南路志』の宗安寺村(現高知市)の条に、「行川地区との境に高さ三十間ばかりの尼ノ滝があり、この辺りには古くから山婆が住みついていた」ことが記述されている。近くには宗安禅寺の奥の院もあるので、昔は人々があまり近づかない場所であったと思われる。現在は平成五年に制定された『鏡川保全条例』により「川上不動尊の森」として自然環境保全地域に指定されている。 |
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