土佐史研究家 広谷喜十郎 |
227釣船(つりふね)神社-高知市広報「あかるいまち」2003年4月号より- | |
最近、『土佐のカツオ漁業史』の中の「原始から近世編」をまとめたこともあって、自分なりの「海の文化史」を書いてみたいと思い、県下の海に関する史跡をあちこち訪ね歩いている。 高知市はりまや町の高知八幡宮には、不思議でユニークな釣船大明神を祭る釣船神社が境内社として鎮座している。 この神社は「キスゴさま」の愛称で呼ばれ、熱病退散の霊験あらたかで、熱冷ましの祈願に参拝する人が多く、市外からの参拝もあるという。 キスゴを描いた絵馬を奉納する風習があり、神社の絵馬掛けには、たくさんの絵馬が掛けられていたのが極めて印象的であった。受験生にも、風邪などひかず、ベストコンディションで受験できますようにと願い参拝する人が多いという。 神社側の説明によると、祭神の実体は不明であり、なぜ熱切りに効能があるかはっきりしないようである。 神社の掲示板には「昔、御畳瀬浦の船が釣りをしているとキスゴの漁が多く、その中に御神体が上がり、釣船大明神とお祭りしたところたちまち御神威を発揮され、古来熱病退散の霊験あらたかであり熱切りの神様と信仰せられています」と、記述されている。 キスゴはタイのような派手さやめでたさは無いにしても、浦戸湾の申し子のような魚で親しみのある魚に違いない。そのキスゴ釣りをしている時に、キスゴとともに釣り上げた物体を、縁起を担いで神として祭ったものであろう。 その信仰は、エビス信仰に代表される。海から寄って来るものが海の幸をもたらすというもので、それが人間の幸福につながる信仰に発展していくのである。例えば、亀の背中に乗ってやって来るという霊亀信仰がよくある。 |
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