土佐史研究家 広谷喜十郎 |
250人形供養など-高知市広報「あかるいまち」2005年3月号より- |
和歌山市加太にある、女性の病気回復、子授け祈願で有名な「淡島さま(淡島神社)」を訪ねたことがある。鮮やかな朱塗りの神殿の内外に、すき間なく、たくさんの人形が奉納されていて驚かされたものである。毎年三月三日には、全国各地から寄せられた約二万体の人形を白木の舟に載せ、海に流す「ひな流し」を行っている。人の汚れや災いを人形に託して流し、厄払いをする行事である。 ●市内中心部にひっそり佇む子守神社(はりまや町三丁目) 県内にも数カ所の淡(粟)島神社がある。江戸時代に、「淡島さま」の人形を入れた厨子を担いで、全国各地を巡った人々により淡島信仰が普及したといわれている。 毎年五月ごろには、「人形供養祭」が鏡川みどりの広場で行われている。各家庭でそれぞれに愛着を持って親しまれていた人形も、手放さざるを得ない事情が生じてくるようで、持ち込まれる人形の数は年々多くなっているそうである。 また、はりまや町にたくさんの人形が奉納されている子守神社がある。この神社は、かつて城下町の総鎮守であった神明宮の一角にある。祭神は「水分神」で、「人にとって あらゆる生産の根源である水の神秘性生命力への信仰は 水配り みくばり 水分 身籠り 子守りと転訛して やがて五穀豊穣 商売繁盛と身籠子守の神の二属性を兼ねもつ信仰となり 伝承されたものである」と刻記された石碑が建てられている。末尾に本居宣長の「水分の神の誓ひのなかりせば これのあが身は生れこめやも」との歌も刻まれている。子どもの夜泣きや発熱に効き目があるとのことで、願掛けが行われる。お礼参りには、人形を奉納するという。 女性たちが子宝を願って、人形を奪い合う奇祭「御田祭(室戸市吉良川町)」もある。 五台山にある千代丸神社は、戦国時代ゆえの悲劇を伝えている。大野康雄著『五台山誌』によると、「千代丸さま」が長宗我部氏の家来によって舟の上で暗殺された折、飛んだ首が船べりにかみつき、なかなか離れなかったと伝えられる。それで、首から上の病気に御利益があるとのことで、参詣する人も多く、諸願成就のお礼にダルマや姫ダルマが数多く奉納されている。 このように、人形を用いた行事や儀式が各地で根付いている。 |