支える喜びに目覚めて
渡辺裕士さんは、静岡県出身。高校を卒業して機械整備の仕事をしていたところ、地元の仲間に声をかけられ、全国から60~70チームが集まる「よさこい東海道」のボランティアに参加した。最初は祭り当日の手伝いだったが、同世代の仲間と裏方チームを結成し、演舞場の運営やボランティアの募集、鳴子の販売など、関わりは年々深まった。
ある年、鳴子の扱い方がわからず、何度も投げてしまう子どもがいた。「その場で思いついて、鳴子を紐で結んで首にかけてあげたんです。その子も、親もすごく喜んでくれて、うれしかったですね」。
裏方のやりがいを実感し、5年間、祭りの裏方を務めた。
憧れの高知へ
裏方の役目を地元の大学生に託し、よさこい東海道の会場でもある商店街でカフェの店長になった渡辺さん。一度は本場のよさこい祭りを見に行きたいと、2011年、初めて高知を訪れた。知り合いに誘われ、運よく地方車に乗せてもらえることに。「追手筋本部競演場、大勢のお客さんが見守る中、踊り子がずらっときれいに並んでいる。衝撃でした」。
よさこい祭りに魅了され、翌年は2泊3日で高知にやってきた。桂浜の民宿に泊まり、カツオの刺身も堪能した。「静岡の人もあったかいんですが、高知の人はさらに楽しむのが上手。高知っていいな」。高知への憧れを募らせた。
2014年3月、勤めていたカフェを辞めることになった。地元の知り合いから「うちに来ないか」と声がかかったものの、渡辺さんは「30歳を目前にして、これはいい機会。高知へ行こう」と、単身高知へ飛んだ。
高知のよさこい祭りを支えたい
高知で仕事を探すなら運転免許が必要とアドバイスを受け、まずは自動車学校の合宿に参加した。合宿中に住まいを探し、高知市内で就職先を探していたところ、豆腐製造会社の配送の仕事がみつかった。
もうすぐ働き始めて1年が経つ。「よさこいは一度も踊ったことはない」という渡辺さんの楽しみは、通勤途中に見る練習風景。「たどたどしい踊り子が、少しずつうまくなって、みんなの踊りが揃っていく。それは感動します。高知の競演場・演舞場も裏方が不足していると聞くので、これからはボランティアとしてよさこい祭りを支えていけたら」
よさこいと高知の人に惚れ、支える人が一人増えた。
よさこい移住のQ&A
Q. よさこいの魅力は?
A. 踊り子にならなくても、楽しめること。踊り子に声をかけたり、振りを一緒に踊ったり、他のお祭りにはない一体感があります。
Q. 住居探しはスムーズでしたか?
A. お酒を飲むのが好きなので、ひろめ市場の10分圏内でリーズナブルな物件を探しました。仕事を探している最中でしたが、両親に保証人になってもらうことで入居契約ができました。
Q. 仕事はどうやって決めましたか?
A. ハローワークに通いました。せっかく高知に来たのだから全国チェーンの仕事ではない地元企業に絞り、関心のあった食に関係する企業4~5社に応募しました。