よさこいを学んでみたい!
仕事の関係で高知市へ移住することが決まって真っ先に頭に浮かんだ単語は「坂本龍馬」と「鰹のタタキ」でした。
私は以前、隣の徳島県に留学した経験があり、高知産の食べ物の美味しさや、時々大河ドラマで登場する龍馬は百も承知していましたが、この地域を代表する文化「よさこい祭り」はあまり知らず、名前だけは聞いたことがあるくらいでした。これまで、東京の三社祭、岸和田だんじり祭、京都祇園祭、阿波おどりなど、数々の日本のお祭りに興味を持って見て回りましたが、あくまで実演を記録・保管する第三者からのアプローチでした。
しかし、高知はこれから自分が住み着いて生活する土地。この文化を伝える当事者の立場から、身をもって「よさこい」を学んでみたいと考えました。そんな時に、高知市役所の「正調よさこい鳴子踊り(以下、「正調」)高知市役所踊り子隊の移住者・移住希望者枠踊り子」の募集情報が目に留まり、今回こそ「『見る阿保』より『踊る阿保』になろう!」と、迷わず参加することを決意しました。
意外と難しい「正調よさこい」
正調で使われる楽曲「よさこい鳴子踊り」(作詞・作曲:武政英策)の歌詞は4番までありますが、振り付けは1分弱の動きが繰り返される仕組みになっています。踊りの動作がそれほど難しくないため、2~3回の練習でほぼ覚えるようになり、踊り子隊の皆さんと合わせることが出来たと思い返しています。
しかし、熟練者の方から見た私の踊りは、足の運びや腕の振り方までお粗末そのものだったのでしょう。「腕をもっと上げて」「腰を下ろして」「鳴子はスナップで鳴らして」など、しばしば指摘されました。音楽の流れに乗って軽々と踊るベテランの演舞や微妙な間の取り方は、すぐには真似できない深さがありました。踊りの型がはっきりしているがゆえに、四拍子の表拍(「1と2と3と4と」のリズムをとった時の数字の部分)に鳴子を鳴らしたり、掛け声に合わせて振りを付けたりするため、誰にでも真似できると思いきや、決してそう単純ではありませんでした。
心に刻んだ高知の夏
真面目に練習に取り組んだかと聞かれると返答に窮しますが、本祭だけは体力の限界を感じながらも丸2日間は踊り子隊の皆さんと一緒に行動しました。とはいえ、高知市役所踊り子隊は、演舞場や競演場以外にも福祉センターや保育園での演舞が盛り込まれているため、ハードスケジュールでした。最初は厳しい日程の中で、早朝から遠方の施設をわざわざ訪問することに疑問もありましたが、踊り手の首に掛けてくれるお年寄りと子どもたちの手作りメダル、寝たきりの状態でも笑顔で迎えてくれる方々の優しさによってすぐ納得できました。市役所踊り子隊には、「よさこいで元気を届ける」もう一つの使命があったのでしょう。
正調とともに笑顔を届けたこの夏、空に鳴り響く鳴子の音と音楽は「ヨイヤサノ サノ サノ」「ホイ ホイ」という掛け声と一つになって観客の熱気に包まれ、人々を癒し、元気づけ、踊り手を興奮させました。
このように、高知の8月は私の心に深く刻まれました。
※お名前の読み仮名はきむ ぎゅどさんです。