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町並みを彩るいぶし銀
土佐の風土に合った上質瓦
明治以降、御瓦師の銘は消失するも、安芸は粘土瓦の産地として栄えた。瓦屋は屋号に「アキ」の名をつけ、「アキ寅」「アキ国」など十数軒あった。「アキ国」 (現:長野瓦)もその一つで、「安芸國鬼瓦」として、鬼瓦を家の守りとする伝統文化と製造技術を継承している。
鬼瓦は屋根の棟の端に付ける雨じまいと装飾の2つの機能を持つ瓦で、寺院をはじめとする和風建築に用いられ、千数百年の歴史がある。
鬼瓦を作る職人は「鬼師」と呼ばれ、粘土を板状に伸ばした上に粘土を盛り、平面図をもとに鬼の顔、家紋、水文様など、複雑な形も一つ一つ手作業で成形する。何度もヘラを当てて表面を美しく磨き上げ、乾燥させて焼き上げる。表面を炭化させる特殊な焼成方法により、いぶし銀の輝きが生まれる。
安芸國鬼瓦の歴史
土佐には強固で雨に強い、いぶし銀の「安芸瓦」がある。安芸瓦は、延宝2(1674)年、伊予 国菊間村(愛媛県今治市菊間町)の瓦師・半兵衛が四国巡礼の途中で安芸に良質の粘土を見つけたことに始まる。元禄 13 (1700)年、土佐藩が半兵衛を招き、御用瓦を製造した。翌年、清右衛門が土佐藩庁に瓦製造業の創始を願い出て許可され、菊間出身の瓦工・茂兵衛と子どもの五郎兵衛を雇い入れ、 瓦造りを本格化した。五郎右衛門家は藩の御用瓦師となり、鯱や鬼瓦を独占的に製造した。
鬼瓦は屋根の棟の端にあって、家を守る役目がある。火を止める意味から、水にちなんだものが多い。
伝統を守り、モダンをつくる
大正13年創業、長野泰啓氏は三代目となる。「屋根のことなら何でもおまかせ」と、瓦以外にも太陽光設備や屋根板金など、多種多様な屋根材を扱う。時代が変わる中でも安芸瓦にこだわり、モットーは「自社で作り続けること」。責任ある仕事が信用につながると話す。
鬼瓦を作るのは、成形担当の西山春幸氏。熟練の技で威風堂々たる家の守り神を作り出している。数は少ないものの、いつの時代も必ず需要はある。「鬼瓦は家内安全・無病息災を願う象徴で、私たちの暮らしを屋根の上から見つめ続けてきた。その時代の想いや願いが託されている。なくしてはならない」と、泰啓氏。伝統の「技」と、時代のニー ズを捉える豊かな「感性」を、次世代につなぐ。
材料は粘土のみ。人の手だけで丹精込めて作られる。
1ヵ月以上かけてしっかりと乾燥させ、焼き上げる。
長野 泰啓さん
瓦は土に還る資源であり、100年の耐久性と、時を経て風格が増す良さもあります。通気性が良い、修理ができる、断熱性が高い、不燃性であるなどたくさんの利点がある優れた日本の建材です。何よりも、我々を守ってくれる鬼瓦の存在がありがた いです。
連絡先 株式会社長野瓦
安芸市庄之芝町4-3
Tel.0887-35-3551
Fax.0887-35-4693
E-mail:honsha@nagano-kawara.jp
販売場所 安芸駅ぢばさん市場
安芸市矢ノ丸4丁目2-30
Tel.0887-35-7500
鬼瓦を彫る道具の一部。細かな模様、ダイナミックな形を 抱き茗荷の家紋が入った鬼瓦。
作るため、道具も自作するという。 足部分と鬼瓦部分の3つの部品からなる。