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悠々と空を舞う、雄々しい絵柄
毎年の凧揚げ大会で文化を伝承
土佐凧はとてもシンプルな構造で、厚手の丈夫な手漉きの土佐和紙と竹ひごで作る。正方形の角立てで、真ん中の胴骨に「ちもと」が縦一直線に並ぶ独特の形状。「ぶんぶ」と呼ばれる横骨は外すことができ、くるくると巻いて持ち運ぶことができる。
男児の誕生を祝って凧を揚げ、祝宴を開いて子どもの成長を祈ったその風習は次第に薄れたが、新正月から旧正月にかけて高知県内では「土佐凧揚げ大会」が開催される。尾のように長く垂らした「ジャーラ」を奪い合って凧揚げの技術を競ったり、百畳の大凧を揚げたり、大小さまざまな土佐凧が大空を舞う。
土佐凧の歴史
戦国時代には、相手との距離を測るための兵器として使用されたという土佐凧。ブンブンと空を切る音は相手を動揺させ、心理的に追い込むことに効果があったといわれる。
その後は男の子の誕生や節句を祝って揚げられるようになり、親戚や近隣の人たちが誕生祝いとして贈ったことから、家紋を描いた凧が多かったといわれる。墨の線と鮮やかな赤色が特徴で、赤には魔除けの意味がある。
土佐凧の鮮やかな色彩を身近に
「現代の名工」に認められた吉川登志之氏の技術を受け継いでいる、五代目の吉川毅氏。土佐の伝統文化を残したいと願う父の跡を継いで30年、平成23年に「土佐の匠」に選ばれた。土佐凧づくりは湿度が重要で、染料や顔料が乾くスピードが仕上がりに影響するため、冬場が適しているという。描くのも組むのも、すべて一人の手作業。一つひとつ、心を込めて作り上げる。
男児の誕生を祝って凧を揚げる風習が薄れ、住まいのインテリアとして人気が高まっている土佐凧。勇ましい若武者、金太郎、めでたい鶴、干支などさまざまな絵柄があり、サイズも豊富。小さいサイズの額装の土佐凧を複数並べる楽しみ方もオススメ。和の空間をおしゃれに演出する。
インテリアとして人気のミニ凧。
干支や武者絵など15種。
吉川 毅さん
土佐和紙の生産者が減少し、土佐凧づくりも徐々に難しくなっています。土佐凧を作る職人は複数いましたが、今は当店1軒のみ。最後の職人として、この土佐凧の文化を伝えていきたいです。
連絡先・販売場所 吉川染物店
香南市香我美町岸本56
Tel.0887-54-2528
木炭で大まかに下書きし、 勇壮で艶やかな武者絵。
墨で一気に描き上げる。 竹ひごをつけずに額装 した土佐凧も人気。