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アユ産卵観察 (水中編)
No.72 アユ産卵観察 (水中編)
ほぼ週刊鏡川 2012.12.04
どうも。「ほぼ週刊鏡川」初代担当のMです。現在は環境保全課とは別の部署で働いておりますが,鏡川への情熱は一向に冷める気配はなく,今回は特別寄稿として水中用カメラを新調して撮影に挑みました。
さて,やはり晩秋に川に潜るのは寒いんです・・・。当日(2012年11月28日)の水温は12℃。普通はこの水温だとドライスーツという体が濡れないスーツを着て潜るらしいのですが,お値段がすごく高いんです。そんなもの買えるはずもなく,体の濡れるウエットスーツで潜ります。気合があれば寒くないもん(ウソ)。でも,寒いと体温を維持するために脂肪が燃焼するのでダイエットに良さそうです(半分ホント)。
上の写真,ウエストについているのは何でしょう?
これ,ウエイト(おもり)なんです。6kgのダンベルにクッションカバーを取り付け,ベルトに縛り付けた応急的なものです。ダイビング用のちゃんとしたウエイトも売ってますが,高い。私の場合,年に何回も使うものではないので家に転がっていたダンベルで代用。このウエイトのおかげで,瀬でも流されずに撮影できました。グッジョブ。
しかし,この出で立ち,完全に不審者ですな・・・
今回は紅葉橋の上流にたくさんの群れが見えたので,そこで潜ってみました。
橋の上から観察すると,流れの緩い場所に千尾ほどの真っ黒い塊の群れが見えます。イダ(ウグイ)らしき大きな魚の群れも見えます。まずはその群れの迫力映像を撮影しようと潜ってみるも,あまり透視度が良くなく,2メートル先もはっきりとは見えない状況で,群れに近づくことさえできません。大群の撮影は失敗に終わりました。
そこで,産卵に適した場所で,じっと待ち伏せする戦法に変えてみます。アユはそこそこ流れの速い瀬で,小石が泥を被ってなく,浮石状になったところに好んで産卵します。そのような場所を発見。よく見てみると既に産卵した形跡が見られます。
よし。ここで待っていれば必ずアユは寄ってくる!
予想は見事的中。数分のうちに周囲をアユに取り囲まれてしまいました。
手を伸ばさなくとも届く範囲にアユたちが集まっています。産卵に夢中で,すっかり警戒心もなくなっているのでしょう。
決定的な産卵シーンを撮影したかったのですが,それは撮れませんでした。残念。かろうじて撮れたのが,この産卵直後と思われる写真。右側の集団が産卵したと思われます。銀色に光っている個体は,せっかく産んだ卵を食べているのではないでしょうか。この卵を食べる行動の理由は諸説ありますが,珍しいことではありません。
あたりはだんだん暗くなってきて,寒さで活動限界を迎えました。目の前で繰り広げられる命の営みに高揚感を感じ,あまり寒さも感じなかったのですが,ふと正気に戻ると,やっぱり寒い・・・
こんな都市の真ん中を流れる川の,みなさんの足元で,人知れず壮大な産卵光景が繰り広げられています。来年も再来年もこの光景が見られるように,多くの命を支えているこの自然環境を大切にしていきたいと強く感じました。