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第410回高知市議会定例会市長説明要旨(平成20年9月11日)
第410回高知市議会定例会にご出席をいただき,まことにありがとうございます。
まず初めに,今月3日に急逝されました故吉川明男教育長に対しまして,慎んで哀悼の意を表します。
吉川教育長の突然の訃報に接しまして,私自身大変な衝撃と,高知市にとって本当に大切な人を失ったという深い悲しみに言葉もありません。
ご遺族をはじめ,ご親族の皆様方にとりましても,到底信じられないことであり,そのご心痛はいかばかりかとお察し申し上げます。
高知市教育長として,全教職員の先頭に立ち,力強いリーダーシップの下に,吉川教育長が最も大切にされた子ども達の視点に立ち,教育改革の取組はもとより,教員の資質向上,教育施設の拡充等に全精力を注がれるとともに,全国に誇れる教育研究施設「アスパルこうち」の建設,全校での不登校対策の推進,中学校学力向上対策のほか,追手前小学校と新堀小学校との統合の課題や,学校給食調理業務の民間委託などに全身全霊をかけて取り組んでいただきました。
大変困難な状況の中で,山積する教育課題を着実にひとつひとつ粘り強く解決していただき,常に「子ども達の幸せのために」を原点とします吉川教育長の教育にかける人並みならぬ熱い情熱には,ただただ頭が下がる思いであります。
まだまだ多くの教育課題への対応が求められる重要な時期に,吉川教育長を失ったことは,本市にとりましても,また高知県教育界全体にとりましても大変な損失であり,まさに痛恨の極みであります。
もはや,吉川教育長のお力をお借りすることはできませんが,その教育にかける尊いご意志を引き継ぎ,吉川教育長が生涯をかけて守ってこられました子ども達のために,様々な課題を解決していくことが,私どもの大切な使命であると考えます。
本市の教育の発展のため,多大なご貢献を賜りました故吉川教育長の御霊に心から哀悼をささげ,ご冥福をお祈り申し上げます。
次に,当面する市政課題に関連して,ご報告と考え方を順次申し上げ,ご理解を賜りたいと存じます。
まず,直近の国政の動向について申し上げます。
今月1日の福田首相の退陣表明は,昨年9月の安倍前首相の退陣から1年も経過しない中での突然の出来事であり,しかも,先月29日には,自らが編成方針を示した「安心実現のための緊急総合対策」を政府与党でとりまとめ,今月12日に招集予定でありました臨時国会に関連補正予算案を提出しようとしていた矢先のことで,驚きと失望感を強く抱いたところです。
いわゆる衆参ねじれ現象の下で,日銀総裁人事の問題やガソリン税,道路特定財源関連法案など,難しい国会運営を強いられる一方,衆議院の解散総選挙が現実味を帯びる中での内閣支持率の低迷など,最終的に苦渋の決断をされたものと推察いたします。
しかしながら,ガソリンや食料品などをはじめとします諸物価が高騰する中で,国民の不安解消や第一次産業の支援など,一刻も早い緊急経済対策が求められている状況下での突然の辞意表明には,批判も強く,今回の政治的な空白が国民生活にも影響を与えるのではないかと懸念しています。
今月22日には,自民党新総裁が選出される予定ですが,一日も早い国政の正常化と総合経済対策など重要施策の実施が望まれます。
混沌とする政治状況の中で,先月末に締め切られました国の平成21年度予算の概算要求は,国民生活の安全・安心や,環境問題に手厚く配分する予定の重要課題推進枠3,300億円を狙った各省庁の予算要求に加えて,国債の元利償還が過去最高額となることなどにより,一般会計総額で本年度当初予算比6兆744億円の増となることが明らかになっております。
この概算要求に併せまして総務省が先月28日に発表しました平成21年度の地方財政計画の試算では,国税収入の落ち込みに伴いまして地方に配分しすぎている交付税を減額することなどにより,約6,000億円が新たに減額されることとなっております。
今後の政局の動向や,来年度の地方財政対策に向けた総務省と財務省の厳しい攻防に左右されるところではありますが,額面どおりに減額されることになりますと,現状でも大変厳しい財政運営を強いられている地方自治体にとりましては大変な打撃となります。
全国知事会及び全国市長会ともに「到底受け入れられない」ものであり,地方財源の充実確保のため,全国市長会等を通じ,国に対し強く訴えてまいります。
このように来年度の地方財政には明るい材料が見当たらない状況の中,平成19年度決算の確定に伴い試算いたしました本市の今後の中期財政収支見通しについて申し上げます。
今回の粗い試算では,市税,交付税,社会保障関係経費の今後の動向により,一定の上ブレ・下ブレが想定されますが,平成21年度から25年度までの5か年で,概ね300億円台の一般財源の不足が見込まれ,各年度の平均的な収支不足は,単年度で60億円から80億円程度不足するという大変厳しい見通しとなっております。
今回の推計は,公債費の将来推計とそれに伴う交付税算入額の推計について作業中のため,現時点での粗い推計であり,また,本年12月頃に明らかになります平成21年度地方財政対策を受けて,修正していく予定の数値でありますことから,今後の収支改善策も含めまして,来年3月議会には「新財政再建推進プラン(仮称)」として改めてお示しさせていただく予定であります。
今回の推計における主な収支不足の要因としましては,平成22年度に,鏡村・土佐山村との合併による普通交付税の割増措置約4億円がなくなりますとともに,平成16年度に行った縁故債の借換え元金の新たな償還が始まることなどによる公債費の増額があります。
現在想定しております収支改善策では,定数削減や職員の退職に伴う新陳代謝,アウトソーシング等による人件費の縮減効果,下水道使用料等の使用料・手数料改定による効果,退職手当債の活用等により,5か年で約200億円程度の収支改善を見込んでおりますが,残ります100億円程度の収支改善がさらに必要となる見通しであります。
そのため,既存業務の廃止や組織単位での業務の存廃を含めた事務事業の見直しのほか,人件費も含めた総管理コストの縮減への取組などにより,さらなる収支改善を果たしていかなければならない状況です。
今後,国等の情報収集に努めながら,さらなる精査を行ってまいりますので,よろしくお願いいたします。
次に,関係します財政健全化法関連数値について申し上げます。
地方公共団体の財政の健全化に関する法律,いわゆる財政健全化法につきましては,その全面適用は平成20年度決算数値に基づくものになりますが,先立ちまして平成19年度決算に基づいて算定しました同法に基づく健全化判断比率と資金不足比率の公表が義務づけられております。
そのため,今議会におきまして,決算の認定議案とともに,各指標の報告をご提案したところですが,「実質赤字比率,連結実質赤字比率,実質公債費比率,将来負担比率」の健全化判断比率4指標につきましては,いずれも早期健全化基準を下回る結果となりました。
しかしながら,公営企業とみなされます水道事業,下水道事業など6会計のうち,国民宿舎運営事業特別会計におきまして,資金不足比率が227.1パーセントとなり,経営健全化計画の策定が求められる基準の20パーセントを大きく上回る結果となっています。
そのため,法の全面適用となります来年度決算に向けまして,着実な経営改善を果たしてまいりますとともに,国民宿舎の本市観光に果たす役割の重要性や累積債務の状況を考慮しますと,一般会計からの負担についても検討していく必要があるのではないかとも考えているところであり,市議会のご意見も賜りながら検討してまいりますので,よろしくお願いいたします。
次に,行財政改革の取組について申し上げます。
まず,アウトソーシング推進計画に基づきます取組の進捗状況ですが,本年度は5月からの公用車運行管理業務の民間委託に続きまして,7月1日からは高知大学を指定管理者とする土佐山へき地診療所におけます指定管理者制度を導入いたしました。
今後は,今議会でお諮りしております潮江東小学校での試行を予定しています学校給食調理業務や,包括委託の実施等も含め具体的な検討を行っております競輪事業,財団法人高知市都市整備公社への平成21年度からの公園管理委託の実施とともに,平成21年1月からの昭光園の民立民営化に向けて作業を進めてまいります。
特に,学校給食調理業務の民間委託につきましては,教育委員会において試行候補校を潮江東小学校に絞り,同校の保護者の方々に対しまして日程を夕方や日曜日に設定するなどしながら計5回の説明会を開催いたしました。
そのうち4回は吉川教育長が直接出向いてご説明を申し上げ,延べ94名の保護者の方々の参加があり,また,先進地視察として実際に民間委託により給食が提供されている岡山市立東疇(ひがしうね)小学校に7月7日,県立日高養護学校に7月17日に関係者の方々をご案内したとの報告も受けております。
潮江東小学校における7月9日からの3日間にわたる学年別説明会での参加人数が,23名,22名,18名と漸減傾向にあったため,教育委員会では,参加されていない大多数の保護者の方々に対しまして,民間委託の考え方や説明会の概要をお知らせする必要があるものと考えまして,その3日間の学年別の説明会における内容やご意見,東疇小学校への視察内容をまとめた文書をすべての保護者の方々に配布しております。
このように5回にわたる説明会,意見交換会,2回の視察を通じまして,参加者が少なかったことにつきましては残念でありますが,説明責任は一定果たせたのではないかと判断し,学校給食調理業務委託に係る債務負担行為の設定予算案をこの9月定例市議会にご提案申し上げたところです。
既に全国の中核市39市の中では約7割近くの市が何らかの方式で学校給食調理業務の民間委託を実施しておりますが,本市では初めての取組となりますので,なによりも子どもたちに安全で安心な学校給食を安定的に提供するため,事業者の選定に当たりましては,選定委員会を設置し,委員には大学教授等の有識者,企業診断面や食品衛生管理面の専門家,そして当事者であります潮江東小学校の学校長と複数以上の保護者の方々にも参加していただき,専門性と経験を持った信頼のおける事業者をプロポーザル方式によって慎重に選定してまいりたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
次に,指定管理者制度につきましては,来年度から新たに導入を予定しています福寿園や,はりまや橋観光バスターミナルなど4施設のほか,本年度末で3年間の指定期間が満了し更新時期を迎える高知市文化プラザなど32施設について,それぞれ指定管理者の選定作業を進めているところでありまして,本年12月定例市議会にそれぞれ指定議案を提出させていただきたいと考えているところです。
次に,地方の元気再生事業について申し上げます。
全国から1,186件もの応募があった激戦の中で,全国で120件,うち県内では,高知市をはじめ,室戸市,四万十市の3市の事業が選定され,大変嬉しく思います。
今回国の採択を受けました本市の事業では,高知の強みであります,豊かな「環境」や「食」を軸として,「新たな観光素材」の発展も見据えながら,企業等の協力による民有林整備手法の検討や,エコ農業の普及とブランド化,エコ商店街の実証実験などの8つの新たな事業の実証を行い,元気再生に向けた新規施策の構築を行ってまいりたいと考えておりまして,今議会に関連予算を提案させていただきました。
また,国において全国で10都市を選定するとしておりました「環境モデル都市」につきましては,「環境維新・高知市-土佐から始まる環境民権運動-」というテーマを掲げて立候補いたしましたが,残念ながら選に漏れましたものの,優れた取組に対しては国が個別に財源措置を行うとの方向性もありますので,今回採択されました元気再生プロジェクト事業の取組とともに,先導的な低炭素都市・循環型都市を目指してまいりたいと考えております。
次に,ふるさと納税制度について申し上げます。
今回のふるさと納税では,高知市として「環境維新・寄附金」の考え方を打ち出して,寄附金は原則として環境施策に充てさせていただくことを基本に,本市に縁のある方々や,県外の高知ファンの皆様,環境に関心をお持ちの方々などに対しまして,本市の環境施策への応援を求めておりますが,8月末現在で,25件,約250万円の寄附申出書の提出とご寄附をいただいております。
確定申告が必要なことや制度の煩雑さなどによって,この制度を利用していただいている方の数は,全国的に伸び悩んでいるとの報道もありますが,本市の寄附額は,四国4市の中ではトップでありまして,引き続き積極的な営業活動を行ってまいりますので,ご支援賜りますようお願いいたします。
次に,県勢浮揚の指針となります高知県産業振興計画について申し上げます。
現在策定作業が進められております県産業振興計画は,各分野別の「産業成長戦略」と地域別の「地域アクションプラン」で構成され,本年11月の中間取りまとめに向けて,精力的に検討が進められています。
8月27日には第2回検討委員会が開かれ,農業・林業・水産業・商工業・観光の5分野において,「食品加工」や「地産地消」,「食育」など8つの連携テーマを中心に議論を深めていくことが確認されております。
また,県内を7つのブロックに区分して策定作業を進めております「地域アクションプラン」では,高知市は県内唯一の単独ブロックとして計画を策定する予定となっております。
その計画策定に当たっては,農業・林業・水産業・商工業・観光の5分野に環境部門を加えた本市職員13名がワーキングメンバーとして参加し,県の関係部署と連携して,数多くの企業や関係機関へのヒアリングを積み重ねてきているところであり,本市の次期総合計画との関連も見据えながら,高知の強みや優位性を活かした具体的な成長戦略の検討を進めてまいります。
次に,観光振興の取組について申し上げます。
先月開催されました第55回よさこい祭りは,昨年を上回る過去最多の192チーム,約1万9千人の踊り子が参加し,街中を熱気と感動に包み込みました。
また,併せて8月12日に開催しました「よさこい全国大会」は,今年で第10回の節目の年を迎え,北は北海道から南は九州の長崎県まで,県外45チームと本祭で入賞した22チームによる熱い競演が繰り広げられました。
10周年の特別ゲストチームとして,「東京ディズニーリゾート・ドリームダンサーズ」の参加もあり,ミッキーマウスやミニーマウスなどの人気者が大いに会場を盛り上げました。
昨年,悪天候のため残念ながら中止となりました高知市納涼花火大会は,時折激しい雨に見舞われるなど,不安定な天候で開催が心配されましたが,無事4,000発の打ち上げ花火や仕掛け花火を実施することができ,約17万人の観客の皆様に楽しんでいただくことができました。また,なによりも重要である観客の皆様の安全確保にご協力いただきました警察当局など関係機関の皆様方に対しまして厚くお礼申し上げます。
「花・人・土佐であい博」の関連イベントとして開催されました「海洋堂の宝島」は,中心商店街の活性化及び県外観光客の誘致を目的として4月26日から8月31日まで,約4か月間,新京橋プラザで開催され,約2万6千人の方々に入場していただきました。
関係者の方々の熱心な誘致活動と,本県出身で世界的に有名なフィギュアメーカーの海洋堂の宮脇館長と同社長の全面協力を頂き実現されたものであり,中心商店街の来街者数の増加に一定寄与したものと考え,関係者の皆様方にお礼を申し上げます。
次に,企業誘致につきましてご報告申し上げます。
昨年から高知県とともに誘致活動を行ってまいりました「ヤフー株式会社」につきましては,同社の100パーセント出資の子会社「ヤフーカスタマーリレーションズ株式会社」の高知オフィスが開業する運びとなり,さる7月22日に高知県庁におきまして,進出表明式が行われました。
高知オフィスは,ヤフーグループで初めてとなります地方拠点として開設されるもので,「ヤフーオークション」をはじめとするインターネット検索サイトの顧客からのメールでの問い合わせ等に対応する業務内容とお聞きしています。
高知での開業は本年10月末を予定しており,既に「拠点立ち上げスタッフ」20名の募集につきましては本市で採用試験が実施され,選考を行っているところであり,来年4月までには約100人の新規雇用が見込まれております。
Uターン,Iターン採用を含めて若者をはじめ幅広い年齢層の人々の雇用が見込まれており,低迷する経済状況や厳しい雇用情勢を考えますと久々の明るいニュースとなり,喜んでおります。
次に,はりまや橋南地区における高知西武跡地の再開発について申し上げます。
この再開発につきましては,本市では中心市街地活性化の観点から,市街地環境の整備・改善,土地利用の高度化に寄与する優良建築物等整備事業として,国,県とともに支援してきたところです。
再開発の事業者であります株式会社オーナーズ・ブレーンは,本年1月にテナント募集の説明会を開催し,来年の秋頃オープンの予定でファッションビル建設の計画を進めておりました。
しかしながら,米国のサブプライムローン問題に端を発した金融情勢の悪化や,石油価格の高騰による建設資材価格の上昇等の影響もあり,企業側からの説明では,残念ながら単独での再開発計画は困難と判断し,別の開発業者に売却するか,他の企業との共同での事業を模索する方針に転換しております。
高知西武跡地の再開発は,県民市民の期待も大きかったことから,計画を断念したということは,非常に残念に思っているところであります。
この地区につきましては,にぎわいや景観の面からも県都の中心「はりまや橋」にふさわしい商業系の立地が望まれるところであり,県と連携を密にしながら,今後の跡地の動向を十分注視してまいります。
次に,下水道使用料の改定について申し上げます。
景気状況が後退局面に差しかかったとも言われ,原油価格の高騰などに伴う食料品や生活関連物資が毎月のように値上げされ,否応なしに家計の厳しさが増してきています。
このような中,下水道使用料の改定をご提案させていただきますことは,私自身にとりましても大変心苦しい思いでありますが,なにとぞご理解を賜りたいと存じます。
今回提案させていただいております下水道使用料の改定は,前回の平成17年4月の改定から3年余りを経過しましたことから,下水道経営の健全化を目指し,改定率20.5パーセント,3か年での改定額18億円をお願いするものであります。
下水道事業における費用負担の基本方針は,自然現象に起因する雨水に係る経費は公費で負担し,原因者・受益者が特定できる汚水に係る経費は下水道使用者の皆様方に下水道使用料でご負担いただいているものであります。
本市の現行の下水道使用料は,平成16年に策定しました新財政健全化計画に基づき,平成17年度から19年度の下水道財政計画として算出したものであります。
この間,国の三位一体改革の進展による地方交付税の削減や地方財政再建法制の見直し,実質公債費比率の導入など,地方の財政環境は,より厳しさを増してきているところです。
そのような中,本市では,財政を破綻させないために,新たに平成19年度からの3か年を計画期間とする財政再建推進プランを策定し,下水道事業におきましては使用料改定等により2か年で12億円の一般会計繰入金削減を見込みますとともに,さきほど申し上げました平成21年度以降の財政収支見通しにおきましても,今回の使用料改定をお願い申し上げ,収支改善を図っていかざるを得ないものと考えているところです。
また,高金利の政府系資金の繰上償還制度に基づきまして,下水道事業会計におきましても平成19年度から21年度までの3か年で,年利5パーセントを超える起債の繰上償還を行うことになりましたが,この繰上償還の条件としまして,約11億1,200万円になります補償金免除額を上回る下水道の経営改善が求められており,下水道使用料改定及び人件費削減等による経営健全化計画を策定し,着実にその達成を果たしてまいらなければならないこととなっております。
近年,市民の皆様方の節水意識の向上もあり,下水道使用料の対象となります処理水量が伸び悩む中で,施設の老朽化等から汚水処理に係る維持管理費は年々増加しており,現行単価の下水道使用料では,平成21年度から23年度までの3か年で,使用料回収率として汚水処理に要する経費の58パーセント程度しか賄えない状況であり,資本費平準化債の借入を行いましても現行の使用料のままでは約29億円を一般会計から繰り入れなければならない状況となります。
食料品の値上げなど市民の皆様方の厳しい生活状況の中で大変心苦しい思いですが,建設コストや維持管理コストの削減にさらに努めながら,下水道普及率や水洗化率の向上に,より一層取り組み,次世代に健全な下水道経営を引き継いでいくため,汚水処理経費の使用料回収率を高め,下水道事業の財政基盤の安定を図ってまいりたいと考えておりますので,ご理解賜りますようお願い申し上げます。
次に,学校施設の耐震化対策について申し上げます。
学校施設の耐震化のための補助率の嵩上げと地方交付税措置の拡充等を目的とする「地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律」が議員立法により本年6月18日に施行されました。
この法改正によりまして,耐震二次診断でIs値(構造耐震指標)0.3未満の学校施設の耐震化工事に係る国庫補助率が,耐震補強工事では現行2分の1の補助率が3分の2に,改築工事では現行3分の1の補助率が2分の1にそれぞれ引き上げられ,地方交付税の拡充等財政措置も講じられ,制度の改善がなされたところです。
このため,本市としましても,耐震一次診断でIs値0.3未満が判明している施設など,耐震二次診断を実施すれば補助率が嵩上げの対象となる可能性が高いと考えられます小学校校舎12棟,中学校校舎5棟について,「緊急耐震診断事業」として平成20年度と21年度の2か年で耐震二次診断を実施して,その耐震性能を確認していくことといたしました。
なお,今回の法改正は平成22年度末までの時限立法となっておりますので,国に対しまして学校施設の耐震化を計画的に推進するための法期限の延長とともに,補助単価についても実態に則したものとなるよう見直しを行うことなど,さらなる財政措置の拡充の要望を6月4日の全国市長会議で決議したところであり,今後も粘り強く国に対し働きかけてまいります。
次に,追手前小学校と新堀小学校の統合問題につきまして,その後の経過及び今後の方向性について申し上げます。
まず,「新堀小学校・追手前小学校・市教委との打ち合せ会」につきましては,両校の関係者と高知市教育委員会が意見交換を行い,新校設置に向けた協議を進める会として,4月から毎月1回のペースで行っております。
7月8日に開催されました第4回の会の中では,吉川教育長から「新校は新しい学校名をつけるという方向でいかせていただきたい」との提案がなされまして,それに対して追手前小学校関係の委員の方からは「統合自体に今なお納得しがたい思いを持っているが,対等合併であるので,両校の名前を残すか,若しくは新しい学校名にしてほしい」とのご意見が出されたとお聞きしております。
一方,新堀小学校関係の委員の方からは「新堀小学校という名前を変えたくないとの思いを持っているが,追手前小学校のことを考えた場合,変えざるを得ないのではないかと考える」「新校名にすることについて,直接地域住民に説明し合意形成を図ってほしい」とのご意見やご要望が出され,教育委員会は「新堀小学校校区町内会への説明会」を,7月23日と8月6日の2度にわたって開催しております。
この2回の会には延べ67名の参加者があり,参加者の中からは新校名にすることについて疑問や質問はあったとのことでございますが,大きな反対のご意見はなかったとのことでございまして,「新校名で」という教育委員会の提案はご理解いただけたものと考えております。
教育委員会では,8月28日に第1回「校名検討委員会」を開催いたしまして,委員には学識経験者や校長会代表,両校の学校長,PTA会長,地域の代表者の合計12名の方を委嘱いたしまして,新校名を決める作業に着手したとの報告を受けております。
今後の方向性としましては,両校の児童や保護者,地域の方々から新校名の公募を行い,その後「校名検討委員会」で協議しまして,最終的には教育委員会が新しい学校名を決定,10月末には新しい学校の名称が決まるものと考えております。
そして,本年12月議会には平成25年4月1日の統合を定める学校設置条例の一部改正議案をご提案申し上げたいと考えておりますので,ご理解を賜りますようお願いいたします。
以下,議案についてご説明を申し上げます。
今回提出いたしました議案は,予算議案10件,条例議案16件,その他議案12件です。
まず,今回の補正予算は,一般会計につきましては,公共事業等では,国の補助採択に伴い平成8年から9年度に建築しました横内小学校屋内運動場の学校建設公社からの買戻しや,学校施設の緊急耐震診断,平成21年10月からの個人市民税の公的年金からの特別徴収に対応するためのシステム整備に係る経費,国の補助内示に伴います事業費の変更などについて補正するものです。
このほか,議会の皆様方からのご要請もありました後期高齢者医療制度の創設に伴い対象外となっておりました,はり・きゅう・マッサージ施術助成について,後期高齢者医療の被保険者を対象とした新たな助成を開始するための経費などについて,補正することといたしました。
また,合併前の春野町で町単独事業により貸し付けた宅地取得に係る貸付金の滞納整理のため,一般会計と住宅新築資金等貸付事業特別会計で競売費用等について補正するほか,国民健康保険事業特別会計では制度改正等に伴いますシステム改修費等の補正,後期高齢者医療事業特別会計では制度周知に伴う経費,介護保険事業特別会計では,介護保険事業運営基金を財源として,県から借り入れている財政安定化基金借入金の残額を繰上償還するなどの補正を行うものです。
その他の特別会計では,平成19年度の決算確定に伴い収益事業,駐車場事業,国民宿舎運営事業の特別会計において繰上充用金の精算,中央卸売市場事業特別会計では決算剰余金の減債基金への積立てを行うものなどです。
以上,申し上げました内容によりまして,提案いたしております今回の補正規模は,
一般会計 5億1,800万円
特別会計 1億7,922万8千円
のそれぞれ増額であり,補正後の予算規模は,全会計の純計で2,503億2,823万4千円となります。
なお,この補正財源としては,普通交付税を一般財源として充当いたしました。
次に,予算外議案について申し上げます。
条例議案は,法令の改正に伴うものなど16件です。
市第108号及び市第109号議案は,公益法人制度改革による法改正に伴う規定の整備等を行うもので,行政情報公開条例,公益法人等への職員の派遣等に関する条例等関連4条例の一部を改正するものです。
市第110号議案は,地元合意に基づき望海ケ丘地区計画の一部を変更することに伴い,建築物の制限に関する条例の一部改正を行うものです。
市第112号から市第115号までの4議案は,公共下水道,団地下水道,農業集落排水処理施設,桂浜公園汚水処理施設の使用料改定をお願いするものです。
市第117号議案は,知的障害者授産施設昭光園の民立民営化に伴い,条例を廃止するものです。
また,市第120号議案は高知駅西駐輪場の設置について,市第121号議案は鏡文化センターRIOの入浴料を改定するものです。
このほか,市第111号,市第118号,市第122号,市第123号議案は,指定管理者制度の導入又は変更に伴い条例改正を行うものです。
その他の議案は,土地開発公社定款の一部変更,知的障害者授産施設昭光園の譲与議案,道路管理瑕疵によります損害賠償の額を定める議案,工事請負契約の締結議案,決算の認定議案など12件です。
決算の認定議案につきましては,この後,水道事業管理者及び企画財政部長より概要のご説明を申し上げます。
報告9件につきましては,前段申し上げました財政健全化法関連数値の報告や,継続費の精算報告など,いずれも法令所定の手続によりご報告するものです。
以上,提出をいたしました議案について,概要の説明を申し上げましたが,よろしくご審議の上,適切なご決定をお願いいたします。