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第430回高知市議会定例会市長説明要旨(平成23年12月9日)

第430回高知市議会定例会にご出席をいただき,まことにありがとうございます。

1 三期目に臨む所信

三期目の市政を担当させていただきます最初の定例会に当たりまして,お許しをいただき,今後の市政運営に臨む所信を申し上げ,市議会並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 去る11月27日の市長選挙におきまして多くの市民の皆様方のご信任を賜り,引き続き市政を担当させていただくことになりましたことを,市民の皆様方や市議会の皆様に心から感謝申し上げますとともに,三期目のスタートに当たり,改めましてその責任の重さを痛感しております。

平成15年11月30日に市長に就任させていただきましてから二期8年の間,市民の皆様方や市議会の皆様の本当に暖かいご支援とご協力をいただき,職員とともに喫緊の課題であります財政危機への対応を積極的に図り,起債残高を約430億円減らすなど財政再建を着実に果たしてまいりました。

重要施策では,県市連携の下で新しいまちづくりの要となるJR高知駅周辺など3地域の区画整理事業の完成をはじめ,保健・医療・防災拠点となる総合あんしんセンター建設等の都市基盤整備,中心市街地の活性化や産業の振興,雇用の拡大などを推進してまいりました。

また,平成17年の鏡村・土佐山村との合併,平成20年の春野町との合併によりまして,都市部・中山間地域・田園地域のバランスの取れた新しい高知市が誕生し,活力と魅力あるまちづくりに精力的に取り組んでいます。

さらに,現在,ひときわ危機感をつのらせている南海地震への対策や被災者への救援・医療対策,防災拠点づくりなど,現行の防災マニュアルの見直しを進めながら,市民の皆様方の命と暮らしを守る基盤づくりの徹底を進めているところです。

今般の市長選挙では,逞(たくま)しき未来へ向けて,「希望と絆がつなぐ あんしんの高知市」,そして「市民一人ひとりを力強く支える高知市」を実現し,次世代の子どもたちに「あんしんであんぜんな未来」を手渡したいと考え,5つの重点政策を広く市民の皆様に訴えてまいりました。

まず最初に,いのちと暮らしを守る「あんしんのまち」づくりとして,東日本大震災を貴重な教訓とし,現在の南海地震の規模や被害想定を抜本的に見直し,津波浸水の防止や排水対策,津波避難ビルの指定などの避難・救助対策に積極的に取り組みます。

さらに,消防署所の再編や学校・保育園などの公共施設の耐震化を推進し,本庁舎については,耐震化とともに市民サービスの向上を目指すワンストップ機能などを具体的に検討し,市議会のご意見もいただきながら総合庁舎として全面建替の方向性で取り組んでいきたいと考えております。

二点目は,活力に満ちた「にぎわいのまち」づくりとして,産業振興計画と連動した高知市地域アクションプランを着実に実行しながら,第一次産業を軸とした高知の強みである豊かな自然環境と食を活かした新商品の創出や,地域と連携できる県外企業の誘致等により雇用の確保を図るとともに,観光面では,観光資源の発掘とイベントの拡充により外国人も含めた観光客のさらなる増大と滞在時間の延長を目指します。

三点目は,やさしさに溢れる「すこやかなまち」づくりとして,少子高齢化に対応するため,保健所機能の強化や県と連携した医療施策の充実を図り,安心して生活できる社会保障の実現に取り組んでまいります。

また,就学前教育の重要性を考慮して保・幼・小の連携強化を進めるとともに,さらなる学力向上や不登校対策,命を守る防災教育など学校教育の充実を図り,未来を担う子どもたちがいきいきと暮らせる環境を整え,子どもさんから高齢者の方々まで全市民の健康と生きがいづくりを基本にした世代間の絆づくりを進めます。

四点目は,自然環境を未来へつなぐ「誇り高きまち」づくりとして,ごみの減量と再資源化をさらに進め,低炭素都市の実現に向け,小水力発電,バイオマス燃料や太陽光などの自然エネルギーの利活用に取り組み,環境ビジネスや新エネルギー取組企業への支援を積極的に推進します。

また,里山の保全と再生を図りながら,併せて災害時の避難路を確保し,避難場所としての機能を高めてまいります。

最後に,財政安定に向けた「自立と協働のまち」づくりとして,行財政改革を徹底して進めながら,事業の評価方式を導入した新たな行政運営の仕組みを構築し,健全で持続可能な財政基盤を確立するとともに,市民と行政が協働して公共を担い合う共助の再構築や,未来を担う子どもたちのまちづくり活動を支援する子どもファンドを創設するなど,行政と市民の皆様が一体となり,地域を担う新しい協働の仕組みをスタートさせます。

今般の選挙戦を通じまして各地域で,マニフェストに掲げました政策を広く訴えさせていただきましたが,市民の皆様からは南海地震への早急な対策や雇用の改善要望をはじめ,厳しい暮らしの実情を踏まえたご要望や津波対策への強いご意見などを数多くお伺いしております。

こうした市民お一人おひとりのご意見を大切な財産として受け止め,今後の市政運営にしっかりと活かしてまいりたいと考えておりますので,市議会の皆様方の今後とものご指導とご支援を賜りますようお願いいたします。

 以下,当面する市政課題に関連して,順次ご報告と考え方を申し上げ,ご理解を賜りたいと存じます。

2 国政の動向及び平成24年度当初予算編成

まず,我が国の経済状況と国政の動向について申し上げます。

世界経済は,ギリシャ発の財政危機がイタリア,スペインにも飛び火し,欧米,アジアなどで株安傾向が止まらない深刻な事態となっており,為替市場の乱高下と相まって,日本経済にもすでに影響が及んできています。

また,本年10月からのタイ中部を中心に発生した歴史的な大洪水で,県内企業を含む日系企業の工場が浸水する直接的な被害のほか,道路冠水による出荷の遅れなどが生じ,多方面にわたる影響が出てきており,順調に回復してきた生産と輸出が頭打ちになってきたことから,今後の日本経済の先行きが懸念されます。

先月24日に内閣府が発表した月例経済報告では,景気は東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にある中で穏やかに持ち直しているとしながらも,今後は,海外景気が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては景気の減速と雇用情勢の悪化懸念が依然残っているとされ,円高対策や景気回復に向けた国の積極的な施策実施が強く求められています。

こうした状況の中で,東日本大震災からの復興に向けた総額12兆1千億円余りの国の第3次補正予算が先月21日に成立し,復興財源確保法など関連法案についても同月30日に成立しました。

臨時増税の規模約10兆5千億円のうち,個人住民税については平成26年度から10年間での増税分が約6千億円見込まれており,今後各自治体が行う防災・減災対策の貴重な財源となる見込みであります。

次に,平成24年度当初予算編成について申し上げます。

 本年9月に閣議決定されました国の来年度予算の概算要求基準では,地方交付税について本年度の水準を維持するとした中期財政フレームを遵守する方針が示されておりますが,国は新たに児童手当など子育て関連経費の財源として地方側の負担増額を要請するとともに,国家公務員の給与引下げと併せて地方公務員の給与引下げも連動させ,その人件費の削減分に対応する地方交付税を減額する考えを示しております。

 また,社会保障と税の一体改革では,消費税引上げ時の増収分について,地方が独自財源で賄っている社会保障サービスが6.2兆円に上ることを地方側から提示しているにもかかわらず,地方側の財源として配分する考えがないことを主張するなど,地方財政を巡る国の一方的な考え方は地方財政を再び悪化させ,地域経済をさらに疲弊させるものであり,断じて受け入れられるものではありません。

今後の「国と地方の協議の場」の厳しい論議の行方を注視しながら,年末の地方財政対策の関係大臣折衝に向けて,地方財源の充実確保の重要性を国に強く主張してまいりますので,ご支援を賜りますようお願いいたします。

このような国の状況の下で,本市の来年度当初予算の編成につきましては,財政再建の着実な実行とともに,南海地震対策と2011高知市総合計画に登載する施策の実現に向けた予算を確保することとし,一般会計での概算要求基準額を平成23年度当初予算比3.4パーセント増の1,374億円とする予算編成方針を策定いたしました。

去る11月11日に出揃った各部局からの予算要求総額では,分権一括法に基づく権限移譲による扶助費の伸び等によりまして,一般会計概算要求基準額から事業費ベースで約7億円,一般財源ベースで約12億円超過しておりますが,来年度の地方財政対策等の動向を注視しながら,市民の皆様のあんしん・あんぜんを守り,地域活性化を目指した予算編成作業を着実に進めてまいります。

3 行政改革

次に,行政改革の取組について申し上げます。

まず,新たな行政改革大綱について申し上げます。

本年3月に策定しました2011高知市総合計画を受けまして,その実効性の確保を目指し,新たな行政改革大綱の策定が必要であります。

今回の大綱見直しに当たりまして,住民福祉の推進や効果的でより効率的な行政運営を目指してまいりますとともに,新たな視点として,南海地震に備えた市民の命と暮らしを守る体制の整備,地方分権改革への対応,市民との協働,自治体間の連携等を盛り込んだ行政改革大綱を考えています。

今後は,民間有識者等の方々で構成します行政改革推進委員会でのご審議や市議会の皆様からのご意見等もいただきながら,新高知市行政改革大綱案を作成し,パブリックコメントを経て平成24年5月中の策定を目指してまいります。

次に,機構改革と人材育成の取組について申し上げます。

まず,平成24年度に向けた機構改革について申し上げますが,現在,危機管理及び防災に関する事項を所管しております総務部危機管理室につきまして,近づきつつある南海地震への早急な対応など防災対策全般の機能強化を一層推進するため,防災対策部として新設する必要があると考えています。

新設する防災対策部では,市民の皆様のあんしん・あんぜんを守るという命題の下,地域防災計画等の抜本的な見直しや自主防災組織の結成促進,津波避難路と避難場所の整備,防災啓発の推進等に総合的に取り組みます。

次に,地方分権改革に係る権限移譲につきましては,新たに社会福祉法人等への指導・監査業務が増大することから,健康福祉部内に指導監査課を新設し,体制強化を図ってまいりますとともに,平成25年に開催される「ねんりんピックよさこい高知2013」に向けて,ねんりんピック推進課を立ち上げ,本格的に準備作業を進めます。

さらに,東日本大震災後,新たなエネルギー政策への転換が検討されていますが,本市としましても,本市独自の低炭素社会の実現も視野に入れた新エネルギー推進課を設置し,小水力発電や太陽光エネルギーなどの推進に積極的に取り組みます。

人事政策につきましては,人事政策室を人事課と統合し,人材育成を含めた総合的な運用と組織活性化につながる人事政策をさらに進めてまいります。

人事問題に関しましては,先月,教育委員会職員の事件に引き続き,環境業務課の臨時職員が逮捕されるという事件が発生しましたことにつきまして,被害者の方並びに市民の皆様や議員の皆様方に深くお詫び申し上げます。

服務規律の確保につきまして,様々な場面で徹底を図ってきた中で事件が発生したものであり,残念でなりません。

これらの事件を受けまして,12月中にこれまでの不祥事を題材とした倫理研修を全職場において行っております。

この研修では,所属長から職員に対して,日常を通じて常に公務員としての自覚を持った行動を取ることを改めて徹底し,研修の中で職員から出された意見や提言について報告を義務付けておりますので,今回の職場報告の内容の分析も加えながら,倫理研修をさらに充実させ,不祥事の防止につなげてまいります。

また,今年度から導入しました,職員が業務改善のために自ら企画した研修を支援し先進地視察等を行う政策研修事業も震災対策や観光,環境など様々な分野で17件の事業が決定しておりますので,これら研修成果について報告会等も行い,職員の政策立案能力の向上を図ってまいります。

市政への信頼を取り戻すために,人材育成基本方針を踏まえ,公務員としての自覚と倫理観についてさらなる意識啓発を促し,市民の皆様に真に信頼される人材の育成を進めてまいります。

次に,公契約に関する取組について申し上げます。

近年,公共投資の全体量が減少し,受注をめぐる価格競争が激化する中で,賃金低下や労働条件の悪化等の問題が取り上げられており,地方公共団体には,公共調達を通じて事業目的の達成を図りつつ,公正労働基準などの社会的価値を実現する責務があると考えます。

昨年11月に,外部有識者による高知市入札・契約制度検討委員会から,「一定金額以上の賃金支払いを事業者に義務付ける条例については,解決すべき多くの課題もあることから,当面は,公共調達の理念を宣言した基本条例を制定するべき」との提言を受け,さらに,昨年9月には市議会において請願が採択されております。

こうしたことから,本市としましては,全国41市の中核市で初となる「公共調達基本条例」の制定を今議会にお諮りし,本条例議案をご承認賜りましたら,来年4月1日から施行し,公共調達の適正化及び品質の確保,社会的価値の実現と地域経済の発展に向けて新たな取組を進めてまいります。 

4 南海地震対策

次に,南海地震対策について申し上げます。

未曾有の被害をもたらした東日本大震災の災禍から早くも9か月が経過し,被災地では厳しい冬を迎えておりますが,いまだにがれきの撤去作業が続いており,被害の甚大さと復興の困難さを強く感じます。

国の中央防災会議では,本年9月末に「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」において東日本大震災の検証についての最終報告が出され,「今後の津波対策については発生頻度の高低により二つのレベルの津波を想定し,災害に備える」方針への転換が打ち出されましたが,本市の防災対策の要となる東南海・南海地震の被害想定や津波対策の方向性が示されるのは来年の夏から秋頃になる見通しであります。

このため,本市におきましては,「まずは命を守る」ための早急な防災対策を推進することとしております。

特に自主防災組織の結成につきましては,平成26年度までに100パーセントの結成を目指すこととしており,市民の皆様の防災意識の高まりもありまして,本年4月当初の結成率50パーセントから12月時点では54.5パーセントにまで高まってきています。

また,自主防災組織の育成や活性化を図る上で,地域の中心的役割を担っていただく防災リーダーの育成につきましては,例年70人から80人程度の定員数で「防災人づくり塾」を開催してまいりましたが,平成26年度までに総数2,000人の防災リーダーの育成を図ることを目指し,今年度は定員を200人に増員して募集を行いましたところ,定員を大きく上回る申し込みをいただき,会場規模の関係等から250人の定員とし,やむを得ず多くの方々にお断りを申し上げることとなりました。

来年度はこのような事態を招くことがないように会場設定を行い,「防災人づくり塾」を年間2回開催し,より多くの方々に受講していただける機会を設けてまいります。

さらに,津波から命を守るためには,何よりも「まず逃げる」ことが重要となりますので,逃げるための対策として,避難路・避難場所等の整備を進めていく必要があります。

今議会におきまして,浦戸地区など7地区での避難路・避難場所の整備を行うこととし,太陽光による誘導灯や誘導標識の設置等を含めた12箇所の工事経費と17箇所の設計委託費に係る補正予算をお諮りしておりますが,今後とも地域の皆様との具体的な協議の下に,避難路・避難場所等を選定し順次整備を行ってまいります。

さらに,浸水想定地域で自然地形の高台がない場所につきましては,津波避難ビルの指定や津波避難タワーの設置が必要になると考えております。

津波避難ビルの指定につきましては,これまで公的施設を中心に取組を進めており,現在,市営住宅等を含めた指定施設は55施設となっております。

今後,これらの指定施設について,簡易トイレや強化ゴムボート等の備蓄物資の整備を早期に進めてまいりますとともに,引き続き国や県,民間の施設などについて津波避難ビルの指定に向けた協議を行ってまいります。

また,津波による防災倉庫の浸水や破損等に備えるための対策として,津波避難ビルとなっております小・中学校等の防災倉庫に保管している防災資機材を,高い階層にある空き教室等へ移設することといたしました。

長期浸水対策につきましては,次期南海地震によって高知市内で約2メートルの地盤沈降が発生し,浸水範囲は2,800ヘクタールに及び,約13万人の市民に重大な影響が出ると想定されますので,住民の方々の避難先につきまして市外や県外も視野に入れた広域避難を検討する必要があるとともに,多数の避難者の方々に対する食料等の備蓄計画など,国県と連携した具体的な対策を検討しておかなければなりません。

今後の中央防災会議の報告内容も踏まえ,本市の南海地震対策の骨子となる地域防災計画等を系統立てて見直し,具体的に検討するとともに,ハード・ソフト対策を効果的に組み合わせていくことで,地域の防災力のさらなる向上を図ってまいります。

5 庁舎耐震化

 次に,庁舎の耐震化について申し上げます。

本庁舎・南別館についての耐震診断結果につきましては,本年9月の総務委員会,南海地震対策調査特別委員会でそれぞれご報告申し上げましたが,本庁舎・南別館ともに,震度6強から7程度の大地震の振動と衝撃に対して倒壊又は崩壊する危険性が高いとの結果となり,耐震化が必要である旨の判定がされています。

平成20年度に策定しました高知市南海地震対策中長期計画において,庁舎の耐震化については平成29年度までに整備を実施することとしておりますが,耐震性の問題と併せて,建物の老朽化,庁舎の分散化,狭あい化による市民の利便性の低下,また災害対応拠点施設としての機能や庁舎のバリアフリー化が十分でないことなど,早急に解決しなければならない課題が山積している状況となっております。

また,本庁舎等の耐震補強工事を実施する場合は,建物自体の老朽化が解消されないため長期間使用できないことや庁舎の分散化による市民サービスの低下などが改善されないこと,耐震補強により一層狭隘化が進むことなどの問題があります。 

今後は,南海地震対策調査特別委員会をはじめとする議会の皆様のご意見をいただきながら,地震発生時における庁舎での来庁市民及び職員の安全を確保すること,また災害対応拠点としての機能強化に加え,窓口機能のワンストップ化による利便性の向上など,現在の庁舎の抱える諸課題の解決を図り,総合的な市民サービスの改善を抜本的に推進したいと考えております。

6 TPP交渉参加

次に,TPP「環太平洋経済連携協定」について申し上げます。

日本時間の11月14日早朝に米国ハワイ州で開催されたAPEC首脳会議の場で,野田総理はTPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る旨を表明されました。

我が国の意思表明と前後して,カナダやメキシコからも交渉への参加が表明され,仮に従来のTPP9か国に日本,カナダ,メキシコが加わることとなれば,世界経済の中で,EUが占める26パーセントのシェアを上回る,39パーセントを占める巨大経済圏となりますので,改めて,我が国の世界市場に占める割合や他国に与える影響の大きさを実感したところです。

他方,国内では,民主党内を含め,農業関係者の方々や本県をはじめ地方を中心としてTPPへの参加に反対する声も根強く,仮に,参加することとなった場合の第一次産業や地域経済に与える影響の大きさに対する不安も払拭されていない現状があります。

また,TPPに参加することにより,医療や福祉,金融・保険,政府調達等の様々な分野にも影響が及び,国民生活にも多大な影響が生じるというリスクを指摘する声も上がっています。

国においては,「食と農林漁業再生推進本部」が策定した「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」に基づき,農林漁業再生のための安定財源の確保策や消費者負担から納税者負担への移行,直接支払制度の改革などを行っていくとの方向性を打ち出していますが,その具体的方策については,これからの検討課題とされたままになっており,農業関係者や地方の不安を払拭するには程遠いものと言わざるを得ない状況となっています。

ギリシャやイタリアのソブリン・リスクに伴う信用不安という火種が,世界経済を脅かしている中,世界最大の政府債務残高を有する我が国が,引き続き貿易収支や経常収支の黒字を確保し続け,日本国債の信用を下支えしていくための取組も極めて重要であると思いますが,他方,TPPへの参加が国内農業や地方経済,国民生活全般に与えるメリットとデメリットなどを十分に検証し,国民に分かり易く説明した上で,国民的論議を尽くしていくことが今,特に重要であると考えております。

7 国保の基盤強化等医療制度改革

次に,国民健康保険の基盤強化や医療保険制度を取り巻く状況について申し上げます。

国民健康保険制度の基盤強化に向けて,厚生労働大臣や知事会・市長会・町村会の代表で構成されます,国と地方の政務レベル協議が10月24日に開催され,私も全国市長会を代表して参加いたしました。

この協議は,国民健康保険制度のあり方について,保険者である地方団体の意見を充分に踏まえ対応することが必要であることから,市町村国保の構造的な問題の解決に向けた財源などの基盤強化策等について具体的に検討することを目的に設置されたものです。

これまで,この協議開催に向け事務レベルのワーキング・グループが開催され,低所得者対策等のあり方,事業運営や財政運営の広域化,財政支援のあり方などについて議論が行われ,本市からも意見反映を行っております。

これらの議論を通じて,市町村国保の財政基盤強化の必要性を国と地方の共通認識とした上で,税制の抜本改革に関する結論が出るまでに,この政務レベル協議において基盤強化の方向性の結論を出すスケジュールとなっております。

11月24日には,国の社会保障審議会医療保険部会において,これまで開催されたワーキング・グループや政務レベル協議における国保制度基盤強化策等の議論を踏まえ,市町村国保の財政基盤の強化と財政運営の都道府県単位化についての方向性の資料が示されています。

具体的な基盤強化の方向性としては,市町村国保の低中所得者の方々に対する保険料軽減の拡充策として,現在の7割・5割・2割の保険料軽減対象世帯を拡充していくこと,低所得者が多い国保保険者への財政支援をさらに強化するため,現在の保険者支援策の拡充や所得格差等を補う財政調整機能の強化を図ることなどが盛り込まれております。

また,財政運営の都道府県単位化を進めるため,現在はレセプト1件当たり30万円以上を対象としております保険財政共同安定化事業をさらに拡充することによって,都道府県内の保険料格差を是正していく方向性などが示されています。

 国保の構造問題を解消していくために,各市町村間の所得格差を調整し,市町村国保の基盤強化を進めていく方向性は,本市のように所得水準が低い国保保険者にとっては歓迎すべきものでありますので,より充実した基盤強化策となるよう積極的に意見を反映し取り組んでまいります。

国保の基盤強化や国保財政の広域化を目指すために,国は基盤強化の財源として2,200億円の増額を考えておりますが,市町村国保の現状を抜本的に解消するには,まだまだ十分なものとは言えません。

地方団体からも,この財源だけでは不十分であるとの強い意見もありますので,国保が皆保険制度の最後の砦として安定的に運営できるよう今後開催されます政務レベル協議において,さらなる財源の確保を強く求めてまいります。

また,医療保険全体として,パート職員の方々の健康保険への適用拡大や,高額療養費制度の見直しによる自己負担限度額の引下げや受診時定額負担等の新設,総合合算制度(仮称)の導入など,様々な分野での見直しが検討されています。

こうした医療保険制度の見直しは,利用者の方々の新たな負担の問題もありますので,今後の国の動向を注視しながら,地方都市の厳しい実態も踏まえ,国における国費の拡充と低所得者対策の充実など,地方の立場から積極的に国に対して意見を述べてまいります。

8 新図書館等整備

 次に,新図書館等複合施設整備について申し上げます。

 本事業につきましては,昨年8月の県市連携会議で,市民図書館本館と県立図書館,点字図書館,こども科学館を,追手前小学校敷地に整備する方向性で合意して以降,議会をはじめ多くの県民市民のご意見をいただきながら,昨年度に基本構想を策定いたしました。

本年度は基本計画を策定し,それに引き続きプロポーザル方式によって建築設計業者とこども科学館の展示設計業者を選定し,現在,基本設計の作業を精力的に行っているところです。

 基本設計におきましては,高知の新しいランドマークとなる文化施設として,より機能的で市民に親しまれるものを目指すとともに,まちのにぎわいの創出への貢献,津波避難機能など,複合的な課題について具体的な詰めの作業を行っています。

 また,こども科学館の展示設計につきましては,高知県下の特徴ある自然及び地質館などの関連施設を紹介した上で,これらの施設では対象としていない分野を中心に,科学の不思議を体験し,科学的な見方を養うことのできる内容を具体的に検討しております。

現在,それぞれの基本設計の骨格的な部分をほぼ固めましたので,その内容を議会にお示しし,ご意見やご提言をいただきますとともに,来年1月に県民市民の方々に対する説明会を設け,ご意見を伺いまして来年3月末には基本設計を取りまとめる予定となっております。

 その後,平成24年度に実施設計を行い,翌25年度から追手前小学校校舎の解体工事及び埋蔵文化財の発掘調査を進め,建設工事に着手し,平成26年度内の竣工,平成27年度中の開館を目指しておりますので,今後とものご指導とご支援を賜りますようお願いいたします。

9 高知球場夜間照明設備概成

次に,野球場夜間照明設備の設置について申し上げます。

高知球場への夜間照明設備の設置につきましては,高知県からの全面的な財政支援を受けて,本年6月から工事に着手いたしました。

この照明設備は,高さ約35メートルの鉄塔に横10メートル,縦6メートルの照明器具を取り付けた照明塔を,外野4基,内野2基設置するもので,全てのライトを点灯したときの明るさは内野1,500ルクス,外野800ルクスで硬式野球の公式戦を行うことができるレベルです。

工事については来年1月中旬の竣工に向けて順調に進んでおり,暖かくなる春先から皆様にナイターを楽しんでいただくことができるものと考えております。

今般の照明設備ができることにより,高知ファイティングドッグスのナイター観戦などが可能となることや,昼間の利用が困難な野球愛好者による各種大会の開催,公式戦での延長試合への対応が可能となるなど,野球場の利用範囲がさらに広がってまいります。

また,毎年開催していますプロ野球ウエスタンリーグの公式戦をナイターで実施することも可能となり,県民市民の皆様のご期待にも応えることができるものと考えており,全面的な支援をいただきました高知県をはじめ,関係者の皆様方に改めまして感謝申し上げます。

10 補正予算・予算外議案

以下,議案についてご説明を申し上げます。

今回提出いたしました議案は,予算議案8件,条例議案10件,その他議案21件です。

今回の補正予算は,国の補正予算への対応や災害復旧に係る経費及び新陳代謝等による人件費補正などであります。

これらのうち,一般会計につきましては,小学校5校の校舎耐震補強工事の前倒し実施,津波避難ビルに指定している学校等について防災資機材を高所に移設する経費,避難路・避難場所整備など震災対策予算を積極的に計上しますとともに,本年7月と9月に本県を襲った台風災害により春野漁港の防波堤や消波ブロック等に大きな被害が生じましたので,その復旧に要する経費を補正いたしました。

このほか,待機児童ゼロ計画が国に採択されたことによる認可外保育施設への運営補助,緊急雇用創出臨時特例基金事業等について補正いたしました。

また,人件費補正では,水道事業を含む全会計の職員給与費で約7億5千万円を減額いたしました。

以上,申し上げました内容によりまして,提案しております今回の補正規模は,

 一般会計   10億3,300万円

 特別会計   4億2,134万3千円 のそれぞれ増額

 水道事業会計   8,000万円    の減額

であり,補正後の予算規模は全会計の純計で2,462億6,078万3千円となっております。

なお,この補正財源として,特定財源では国・県支出金,市債等を充当し,一般財源については普通交付税を減額いたしました。

次に,予算外議案について申し上げます。

条例議案は,機構改革や法令の改正に伴うものなど10件です。

市第109号議案は,平成24年度の機構改革として総務部危機管理室を防災対策部として新設するもので,市第112号議案は公共調達基本条例を制定するものです。

市第115号議案は県から譲渡を受けた旧土佐寒蘭センターを改修し,新たに土佐山夢産地パーク交流館として設置するもので,現在,平成24年4月のオープンを目指して整備に取り組んでおります。

また,市第118号議案は,前段申し上げました高知球場照明灯の設置に伴い,野球場の利用時間の変更と照明灯使用料を新設するものです。

その他議案は,昨年度に策定しました高知市過疎地域自立促進計画に土佐山夢産地パーク整備など5事業を追加する議案のほか,指定管理者の指定,下知市民図書館新築工事請負契約,消防ポンプ自動車購入契約の締結議案など21件です。

報告4件につきましては,工事請負契約の一部変更についての市長専決処分の報告など,いずれも法令所定の手続によりご報告するものです。

以上,提出いたしました議案について概要の説明を申し上げましたが,よろしくご審議の上,適切なご決定をお願いいたします。