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歴史万華鏡コラム 2021年4月号
高知市広報「あかるいまち」より
五台山のニつの遍路道
五台山にある二つの遍路道(約1.5キロメートル)が国の文化審議会において国史跡指定に答申された。これは五台山々中にある、四国霊場第三十番札所善楽寺から竹林寺へ至る「竹林寺道」と、三十一番竹林寺から三十二番禅師峰寺へ向かう「禅師峰寺道」で、二つとも近世からの歴史的景観が保持されているとともに古図などの歴史資料からも古道として確認できることから答申の運びとなったものである。
この中、五台山西麓の吸江から竹林寺に至る「竹林寺道」は山内家入国以後整備されたと伝えられ、江戸時代の古図にも遍路人や城下から竹林寺詣りで行き交う参詣者、足を休め山腹からの眺望を楽しむ人々の姿が描かれている。現在では樹木が生い茂り展望はよくないが、道沿いには貞享元年(一六八四)に県内三カ所に建立された法華経塔(県指定史跡)の一つや灯籠跡が現存し往時の参詣路の姿をしのぶことができる。
一方、竹林寺から五台山南麓までの「禅師峰寺道」は長宗我部元親が浦戸在城時に設けたとされ、その後も整備が加わり、山中にある参詣路・遍路道としては格段に道幅も広く敷石を敷き詰めた堅固な造りとなっている。これは、土佐藩主の竹林寺参詣の際、藩主を乗せた駕籠(かご)を横に担ぎ上り下りするためで、このことからも竹林寺が藩主祈願寺として格別に重んじられたことがうかがえる。かつては山麓に茶屋が立ち、戦前までは寺の夏大祭に道沿いに絵馬提灯が灯され賑わったともいわれる。今日でも地元の方々が年二回奉仕で清掃を続け、こうした人々の力によって守り伝えられる遍路道でもある。
県内の遍路道の史跡指定は青龍寺道に次いで二件目となり、この度の指定が現在四国四県が産学官民一体で取り組む「四国遍路」の世界文化遺産登録への弾みになればと思う。
五台山は高知市中心部からも近く、標高も低からず高からず。森林浴を兼ねて緑に包まれた遍路道を一度歩いてはいかがだろうか。車を利用するのとはまた違う五台山の歴史の奥深さにきっと出会えるだろう。
竹林寺住職 海老塚 和秀
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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。