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歴史万華鏡コラム 2024年01月号
高知市広報「あかるいまち」より
冬に卵を産むカエル
「カエルのシーズンが始まった!」と、寒い季節に言うと不思議に思うかもしれない。カエルの中には、まだ雪が降り、氷が張るような季節に卵を産む種類がいる。今回はそんなカエル、アカガエルの仲間を紹介する。
高知県にはニホンアカガエルとヤマアカガエルという2種のアカガエルがいる。名前のとおり両方とも体の色は赤茶色で、体長はニホンアカガエルでオスは4~5センチメートル、メスは5~7センチメートル、ヤマアカガエルは少し大きくて、オスは4~6センチメートル、メスは4~8センチメートルくらいである。
ヤマアカガエルは県内の広い範囲にいるが、ニホンアカガエルは見つかっている場所が極めて少なく、『高知県レッドデータブック2018動物編』で絶滅危惧1類にランクされ、さらに2021年には、高知県希少野生動物に指定された。だが、高知市では、両方のアカガエルを観察することができる。
アカガエルたちは、普段は林や草地の中で暮らしていて、繁殖期だけ浅い池や冬でも水が溜まっている水田に集まってくる。オスたちは、暗くなるとメスを呼ぶ合唱を始める。ニホンアカガエルとヤマアカガエルは鳴き声が異なり、同じ水辺で卵を産むようなことがあってもオスとメスが相手を間違うようなことはない。
産み出された卵の塊(卵塊)は、水を吸って直径15~25センチメートルくらいに膨らむ。1つの卵塊には1,500~3,000個の卵が入っている。卵を産み終えたカエルたちは、水辺から離れて、また林や草地に帰って行く。
残された卵は、約2週間でオタマジャクシになる。水の中の植物や小さな動物などを食べて育つが、食べ物が少ない場所では共食いすることもある。
いろいろな物を食べながら大きくなり、他の多くの種類のカエルが卵を産む5月の初め頃になると、アカガエルのオタマジャクシは小さなカエルになって、やがて親ガエルたちのいる林や草地に旅立って行く。
横倉山自然の森博物館 学芸員 谷地森 秀二
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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。