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歴史万華鏡コラム 2024年03月号
高知市広報「あかるいまち」より
波乱万丈チンパンジー タローの歴史
アニマルランドは昨年、開園30周年を迎えた。この節目の年に同じく節目を迎えた動物がいる。アニマルランドの最長老、チンパンジーのタローだ。
1963年、アフリカの港町で、赤ん坊のタローは売られていた。親は肉を取るために殺され、小さな子どもはペットとして売られることがあるのだ。母親から離されたチンパンジーは、大抵が弱っている。かわいそうに思った日本の船員が、タローを連れ帰った。その後、東京の多摩動物公園で暮らすことになった。
1978年、アニマルランドの前身でお城の動物園として親しまれた高知市立動物園に、タローはやって来た。この動物園にはミミという、これも船員が連れ帰ったメスのチンパンジーがいた。しかし、タローとミミは子どもをつくることができなかった。人が育てたチンパンジーは繁殖行動ができなくなることがある。タローもそんなチンパンジーだった。
1993年、わんぱーくこうちが開園した。アニマルランドでは野生本来の暮らしの形である群れ飼育をめざし、3個体のチンパンジーを迎えた。1999年には、ミミと新しく来たコータとの間にヤマトが生まれた。
アフリカから日本にやって来たチンパンジーは500個体以上になる。そのうちの約150個体は、医学研究目的で輸入され、多くが肝炎ワクチンの開発に使用された。野生動物の国際取引を規制するワシントン条約に日本が加盟した1980年以降、チンパンジーの輸入は厳しく審査されている。そして2006年には医学感染実験が停止され、現在まで行われていない。今では絶滅危惧種となったチンパンジーを絶やさないよう、動物園は一体となって繁殖に取り組んでいる。
タローは60歳となり、現在日本で飼育されている約300個体のチンパンジーのうち、2番目の長寿となった。長い歴史を見てきたタロー。70歳の古希をめざして、これからも穏やかに過ごせるよう飼育していきたい。ぜひ、長老タローに会いに来てほしい。
わんぱーくこうちアニマルランド 学芸員 久川 智恵美
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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。