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歴史万華鏡コラム 2024年10月号
高知市広報「あかるいまち」より
一万二千年前の地球温暖化
ことしの夏もとても暑かった。地球は今後どうなってしまうのか。
読者の皆さんもそう思われているのではないだろうか。同じことを、およそ一万二千年前の人類や動物たちも思っていたかもしれない。
過去数十万年間の地球の気温変化を調べてみると、今の地球は氷河期が続いているが、氷河期の中でも、とても寒い時代(氷期)と、比較的暖かい時代(間氷期)に分けられ、およそ十万年に一度の割合で間氷期が来ていることが分かった。現在は、その間氷期に当たり、およそ一万二千年前に迎えたとされている。この時代に農業を始めた人類は今も繁栄しているが、動物たちにはどのような変化があったのか。
このヒントは、県内に多数ある洞窟に眠っている。洞窟内に溜まった土砂の中には、その時代を生きた動物たちの骨が混ざっている。この骨を調べることで、当時の高知にどのような動物がいたのかが分かってくる。日高村の猿田洞には今からおよそ三万五千年前の、そして佐川町の穴岩と呼ばれる洞窟にはおよそ九千年前の動物の骨が残っている。つまり、これらの洞窟に保存された骨を比較することで、氷期が終わり間氷期が来たその前後で、高知の動物がどのように変化したのかをうかがうことができる。
例えば、イノシシの骨は、穴岩からは見つかっているが猿田洞からは見つかっていない。どうやらイノシシが日本にやってきたのは、氷期の終わり頃のようだ。逆に、猿田洞からは「ハタネズミ」という小型のネズミや、オオヤマネコらしき動物の化石が見つかっている。どちらも今の四国にはいない。
現在、佐川地質館では猿田洞と穴岩から発掘してきた動物化石の特別展「洞窟に落ちた動物たち」を開催している。一万年以上前の地球温暖化を乗り越えた先達の記録を、ぜひ見にきてほしい。
佐川町立佐川地質館 学芸員 森 浩嗣
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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。