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歴史万華鏡コラム 2024年10月号

歴史万華鏡
高知市広報「あかるいまち」より

一万二千年前の地球温暖化

11月号写真 猿田洞入り口
●猿田洞入り口
11月号写真 動物の骨化石
●穴岩(佐川町)から採集した動物の骨化石

ことしの夏もとても暑かった。地球は今後どうなってしまうのか。

読者の皆さんもそう思われているのではないだろうか。同じことを、およそ一万二千年前の人類や動物たちも思っていたかもしれない。

過去数十万年間の地球の気温変化を調べてみると、今の地球は氷河期が続いているが、氷河期の中でも、とても寒い時代(氷期)と、比較的暖かい時代((かん)(ぴょう)())に分けられ、およそ十万年に一度の割合で間氷期が来ていることが分かった。現在は、その間氷期に当たり、およそ一万二千年前に迎えたとされている。この時代に農業を始めた人類は今も繁栄しているが、動物たちにはどのような変化があったのか。

このヒントは、県内に多数ある洞窟に眠っている。洞窟内に溜まった土砂の中には、その時代を生きた動物たちの骨が混ざっている。この骨を調べることで、当時の高知にどのような動物がいたのかが分かってくる。日高村の(さる)()(どう)には今からおよそ三万五千年前の、そして佐川町の穴岩(あないわ)と呼ばれる洞窟にはおよそ九千年前の動物の骨が残っている。つまり、これらの洞窟に保存された骨を比較することで、氷期が終わり間氷期が来たその前後で、高知の動物がどのように変化したのかをうかがうことができる。

例えば、イノシシの骨は、穴岩からは見つかっているが猿田洞からは見つかっていない。どうやらイノシシが日本にやってきたのは、氷期の終わり頃のようだ。逆に、猿田洞からは「ハタネズミ」という小型のネズミや、オオヤマネコらしき動物の化石が見つかっている。どちらも今の四国にはいない。

現在、佐川地質館では猿田洞と穴岩から発掘してきた動物化石の特別展「洞窟に落ちた動物たち」を開催している。一万年以上前の地球温暖化を乗り越えた先達(せんだつ)の記録を、ぜひ見にきてほしい。

佐川町立佐川地質館 学芸員 森 浩嗣(ひろつぐ)

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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。