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山の恵みをエネルギーに 五感で見極める炭焼き仕事
土佐備長炭は、高知県またはその近隣地域のウバメガシをはじめとするカシ類を焼いた炭。 なかでも、ゆっくりと成長するウバメガシは木の密度が高 く、最も品質が良いとされ、焼き上がった炭はたたくと金属のような音がする。ウバメガシは熱分解しやすい。
山から伐り出した原木を窯に入れて1週間かけて乾燥させ、煙が充満した窯の中で1週 間かけて炭化させた後、空気を入れながら1000度以上で焼き上げ、窯出しして灰の中に入れて消火する。原木の乾燥や炭化の状態は、窯の底から伸びる煙突の煙の色やにおい、窯口の火の様子などで確認する。原木の種類や状態によって調整が必要なため、熟練を要する。冷えた備長炭はカットし、選別して箱詰めする。
火力が強く長持ちする土佐備長炭は、うなぎ専門店や料亭などで使用されており、品質の良さが認められている。高温で焼いた不純物のない土佐備長炭は、食材ににおい移りがしない利点もある。
土佐備長炭の歴史
炭焼きはもともと中国で生まれた技術で、1000年以上の歴史がある。それが日本に伝わり、土佐では江戸時代から白炭(木炭)が生産さ れていたが、製炭技術が低く、粗悪な炭しか焼けなかった。明治 40 年に、紀州の炭焼き職人である植野蔵次氏が四国遍路で室戸を訪れ、炭焼き窯を見学した際、窯の構造が炭の品質 を落としていると指摘。原料のウバメ ガシをはじめカシ類が豊富なことから、室戸市羽根に居を移し、羽根を拠点に炭焼き場の窯の改良と製炭技術を伝授した。
紀州の製炭技術をベースにしてさらに改良を加えた結果、大きな窯で大量に質のよい炭が焼けるようになった。その技術が高知県東部に広まって、「土佐備長炭」は火力が強く、 長時間燃焼する上質の炭として高く評価され、需要が拡大していった。
協力:合同会社 炭の森生
窯の焚口で生木を燃やし、徐々に窯の中の温度を上げて 真っ赤に焼けた炭をかき出し、灰の中に入れて消火する。
原木の水分を抜く。