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染屋の仕事は、腕一本 土佐の豪気を染める心意気
フラフは、90cmまたは110cm巾の布をつないで大きな1枚のキャンバスに仕立てる。布は木綿と決まっていて、染料と顔料で鮮やかに染め上げる。絵柄は桃太郎や金太郎、勇壮な武者絵などさまざまで、最近はオリジナルのフラフを希望する人も多い。
フラフの製作はすべて手描きで、1枚仕上げるのに1か月半ほど要する。まず、下絵の上に布を広げ、もち米の粉を蒸して煮た糊で筒描きし、染料や顔料が混ざらないよう堤防を作る。 支柱を2本立ててその間に布を張り、表から裏から丁寧に彩色していく。乾いたら背景となる部分を染め、家紋や名前を入れる。色止めをしたら水洗いをして糊を落とし、川で流し洗いを して仕上げる。最後はミシンで縫い合わせて完成となる。夏は糊が腐敗したり、湿度が高いとカビが生えたりするため、作業は冬が適しているという。
天候によって糊の硬さを変え、 布に水を含ませてから色をのせるぼかし染めは、水の乾き具合と刷毛を動かすスピードがポイント。職人の勘が生む「塩梅」がそこにある。
現在では、柱を立てる場所・ 保管する場所がないことから、室内用のミニフラフの需要が増えている。
フラフの歴史
フラフは「旗」を意味するオランダ語・英語が語源と言われ、大漁旗をイメージしてできたもの。男児の健やかな成長を願って、端午の節句にこいのぼりと並んで立てられる。男児誕生の祝いとして、親戚から家紋や名前を入れたフラフが贈られ、近所の人々が手伝って柱を立て、節句にはおきゃくをして皆で祝いの酒を飲むのが慣わしだった。
南国市より東の沿岸部に始まり、 幟に比べて揚げ降ろしが容易なことから、春先に繁忙を極める農家にも広がっていった。
香美市土佐山田は物部川の恵みを生かした染物が盛んで、最盛期には十数軒が軒を並べた。五月晴れの空に鮮やかなフラフがはためく光景は、土佐の勇壮な原風景である。
協力:有限会社ハチロー染工場
背景の染めは、布に水を含ませながら一気に。 2枚つないだ布を回転させながら裏表を染める。 布はピンと張られているが、机の上の紙と比
染料を重ね塗りしてグラデーションをつけていく。 べると柔らかく不安定。色が混ざらないよう、
慎重に糊の際まで色をさす。