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火と鉄と語り、あらゆるカタチに鍛え打つ高度な技術
土佐打刃物は、自由鍛造と言われる。用途、場所(土壌)、背丈などによって、寸法や柄の角度を自由な形で造ることだ。鍬であれば山陰型や土佐型。鎌なら平野部は短く、山間部では角度が大きく柄も長いなど地域に合わせて供給しているから奥深い。土佐打刃物の職人にかかれば、鉄の塊が、瞬く間に希望の型になる。プレスで抜く刃物では、とうてい叶えられない高品質な一本が仕上がる。
職人たちは、「金配り」に心を砕き、「持ち重み」を意識する。これは刃の背や腰を厚く、刃先は薄くしバランスをとることで、同じ品でも持った感じが軽く、長時間の作業でも疲れにくい刃物に造り上げることである。
切れ味がよく、耐久性があり比較的安価なことから業務用に重宝されてきた土佐打刃物は今、和食ブームで包丁は数ヶ月待ちの人気。一方、農林用刃物においては、全国で野鍛冶が減少するなか、高知の職人は、どんな商品にも柔軟に対応できると、最後の頼みの綱としての存在価値を高めている。しかし後継者不足も加速。職人達の長年の思いが叶い、打刃物学校が開設された。この技だけは、どうしても伝承しなければならない。
打刃物の歴史
日本一の森林率である高知県では、古くから林業が発展し農林用刃物も盛んに作られていた。資料によると鎌倉時代後期には、五郎左衛門吉光派による武具刀剣等が繁栄。彼らの技術は山林鍛冶屋にも影響し、高知県に多くの鍛冶屋が点在していた。また、長宗我部地検帳(1590年総地検)には399軒の鍛冶屋がいたと記されている。さらに江戸時代になると、野中兼山による農山林収益策によって、打刃物の需要も増加。この頃に小笠原派と野口派が隆盛。明治になり田村喜蔵(鎌)などが多くの弟子を輩出。この弟子らが切磋琢磨して、他に比類なき土佐打刃物を今に伝える。
協力:(協)土佐刃物流通センター、高知県土佐刃物連合(協)、富士源刃物製作所、香美市商工会
主な事業所
香美市:
「尾田刃物製作所」 「上村鍛造所」 「梶原刃物製作所」
「有限会社 原福鋸工業所」 「秀常鍛工場」 「富士源刃物製作所」
「西岡鍛工場」 「三木忠治鍛工場」 「宗石刃物工房」
「SABRYU鍛造」 「レッドオルカ」
南国市:
「有限会社 トヨクニ」 「松本刃物」 「有限会社 山崎刃物製作所」
土佐打刃物の主な販売先・お問合せ
協同組合 土佐刃物流通センター
高知県香美市土佐山田町上改田109
TEL.0887-52-0467
営業時間/8:30~17:00(土曜・日曜・祝日/10:00~16:00)
http://www.tosahamono.or.jp/
穂岐山刃物株式会社
高知県香美市土佐山田町栄町3-15
TEL.0887-53-5111
営業時間/9:00~17:00
定休日/日曜・祝日・第1、第3土曜日・年末年始
https://www.hokiyama.com/
有限会社 西山商会
高知県香美市土佐山田町間163
TEL.0887-53-4181
営業時間/9:00~17:00 定休日/日曜日、祝日
http://www.nishiyama-shokai.com/
さまざまなサイズの鎌や鍬などありとあらゆる刃物が並ぶ。 鉄をはさむハシという工具。これらも職人達は自ら手作りする。
(土佐刃物流通センター) それぞれの用途や使いやすさにこだわり、大小さまざまな大きさがある。